私がアーユルヴェーダに出会うまで。
私は社会人1年目の頃、起床後身体がすごくだるくて、時折通勤中の電車で具合が悪くなったりすることがありました。満員電車の中で、これから仕事だという緊張感に交感神経が優位になり、脈拍が早くなり、呼吸が浅くなる代償として呼吸数も増え、全体として低酸素のような状態になっていました。ふらついてめまいがしたり、まれですが嘔吐してしまうこともありました。
この時は、仕事なんだからまあこんな不調が出るのも仕方ないよね、誰にでも起こることでしょ、と若さ頼りに身体に鞭打って頑張っていました。午後あたりには体調が戻っていることがほとんどでしたので。
たとえば私のような状態で病院に行ったとしても、治療するほどの対象にはならず、診断名もつけない場合がほとんどだと思います。ですが、もしもこの状態をこれから先繰り返し続けていたら?些細な不調から、年月を経て病気へと進んでいっていたかもしれないと、今は思います。
ストレスで胃潰瘍になる方や、めまいを起こす方がいます。それもその状態になれば薬や処置を行うかもしれませんが、そのような状態になる前に、診断がつかないただの不調の段階で、なにか対処できることがあったはず、と今では思うわけです。
もうひとつ、この話をシェアしたいです。
私が救急外来で勤務をしていた時、血圧が高い、そんな訴え一つだけで救急車を呼んで運ばれてきた、それはそれはもうテクテク歩ける元気そうなおじいちゃんがいました。そのほかの症状はなく、結局もともと高血圧の薬を毎日飲んでいるため、それ以上の治療にはならずに帰宅していきました。なぜ救急車を呼んだのかとおじいちゃんに聞くと「死ぬかと思ったからだ」と。血圧が高い理由を知っているかと問うと「そんなこと知るか」と言われてしまいました。歳をとっていくとプラークが血管の内側に蓄積することで血管が弾性を失って動脈硬化になるから、、、なんて話をしたところで、血圧の高さに関心はなさそうに感じました。その時の私としては、他にも命が危うい人が救急車で運ばれてくる中で、歩けるほど元気な人がわざわざ時間外の救急に、しかも救急車を呼んでまで受診したかった理由を知りたかったのです。そして同時に、この人が自分で対処できることはないのかな、もしくはこうなる前に若い頃から出来ることはなかったのかな、と感じ始めたわけです。
その後も救急外来で、そんな出来事が立て続きました。もちろんそれだけでなく、最重症で救急搬送されてくる患者を目の当たりにし、私は救急という場所にいながら、『予防』という観点に目を向け始め、予防医学という分野にたどり着くことができました。救急外来での経験全てが私の原点であり、アーユルヴェーダを知るきっかけとなる大切な出来事でした。
たとえば病院に行くほどでもない身体のだるさも、前回書いたドーシャのバランスの崩れによるもの(カパが増えすぎた状態)だとしたら。そして、正しい対処法をわかっていたらどうでしょう。
なにか薬が必要になる程辛い状態になる前の段階で、セルフケアを行うのがアーユルヴェーダが目指すものです。
インドでは実際に、風邪をひくと8割がアーユルヴェーダ医師の医院を訪れると言われています。また、少しの体調不良の場合には、インドの家庭には台所にスパイスがたくさんあり、そこから体質と体調に合わせてスパイスを調合する風習があります。キッチンファーマシー(※ファーマシー:薬局)と呼ばれているそうですが、まるでおばあちゃんの知恵のような感覚でスパイスを摂取するのでしょうか、素敵ですね。
前回体質のセルフチェックを投稿しましたが、実は体質には2種類あり、生まれもった(生まれた時の)体質と、現在の体質があります。
忙しなく過ぎていく日々に揉まれることで生じる自分の変化(ドーシャの乱れ)を見つめ、過剰なドーシャを鎮静、浄化させることで生まれた頃の体質に近づけて、本来の体質に戻してあげることで、健幸を取り戻せると言われています。
今の不調に気づくためには現在の身体と心の状態にしっかり目を向けられていれば十分だと思います。
さて、今のあなたの状態はいかがですか?
満腹で眠たいですか?
寝不足ですか?
緊張していたり不安がありますか?
嬉しいことがあってモチベーションが高いですか?
周りと自分を比べて何か感じていますか?
幸福に満ち溢れていますか?
まずは自分の体に目を向けて、私は今こういう状態なのかもと、気づくところからです。
それは身体だけでなく、心にも目を向けることです。
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