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【ep.7】夢は叶えたはずなのに

本当は、ずっと知られるのが怖かった。
歌を作りたい、作るなら歌いたい、歌うなら届けたい、だけど…。

そうして、ライブ活動をしているのに周りの人に「来てね」なんて言えず、SNSでアピールすることもできず、会場にお客さんが少ないと心のどこかでホッとしていた。その方が「本気を出せば、認めてもらえるはず」って淡い期待を抱けたからなのかもしれない。

でもそのままじゃ、先に進めないから。2019年は怖さも痛みも押し切って、「必死になる」ことに決めた。

まず始めたのは、弾き語り動画を毎日SNSにアップすること。SNS恐怖症の私からすると、これでもビッグチャレンジだった(笑)。ライブも月1から、週1ペースに。これまでお客さんが2〜3人いればいい方だったのが、10〜20人もいるような場所で歌うようになった。

するとすぐに直面した現実…。それは、何十人のお客さんの前で歌っても、気に入ってもらえる人なんてほとんど出会えない、ということ。

楽曲なのか、パフォーマンスなのか、私のキャラクターのせいなのか…。ひとまずこれまで以上に練習を重ね、ライブハウスのスタッフさんやお客さんにアドバイスされるがまま楽曲作りを工夫していった。

そんな私にチャンスがやってきたのは、さすがに頑張り方を変えようと思っていた4月の末。ライブハウスのオーナーに「ワンマンライブをしないか?」と誘われたのだ。「80人目標で!」なんてとんでもなくて断ろうと思ったけど、「その前に花*花のオープニングアクトをやっていいよ」と。それは私にとって大事件だった。

小学2年生の頃、テレビに出ていた花*花さんを見て母が言った「あんなふうにピアノを弾きながら歌えるようになったらいいね」という台詞。もしかしたら私のピアノ弾き語りの活動スタイルは、あのときから始まっていたかもしれないから。

小2の頃の文集と花*花さんとの3ショット

後日打ち合わせで決まったスケジュールは、7月に1枚CDをリリース、10月にオープニングアクト、11月にワンマンライブ×新しいCDをリリース。そしてそこで初めて分かったのが、高額なホールレンタル代…。本気でチケットを売らないと、支払えない額だった。

CD制作のために、レコーディング、ジャケット制作(お金をかけない方法を模索しまくった)。ワンマンライブに向けたチラシ制作、当日のコンセプト設計、ベースやギターなどの依頼、バンド練習、動画制作…。

そういった制作に関することは新鮮で、大変ながらも楽しかったけれど。大半はまるで借金取りにでも追われているかのような、息苦しい日々だった。

どんなに頑張ってもチケットが売れない。過去に出会ったいろんな人に、心がちぎれそうになりながら連絡をしまくり、路上ライブにフリーライブ、そのほか人に出会える場所にはとにかく足を運んだ。出会う人がみんなチケットに見えてきて、気が狂いそうになった。

もちろん、来てくれた人に後悔させない時間を作れるよう、ものすごく考え、準備し、練習を重ねていたけど、それだけじゃどうしようもなくて。チケットが売れない=私の音楽は必要とされていない。そんな気がして、何度も胸が張り裂けそうだった。

そして10月。花*花さんとSANISAIさんのライブでのオープニングアクト。お客さんはもしかしたら今までで一番多かったかもしれない。そんな場所で歌えたのはとても光栄で、花*花さんには文集の話ができて喜んでもらえたし、アンコールでは一緒にステージに立てた。

夢のような刺激的な時間だったけど、チケットノルマが多くて3万円ちょっとのお支払い…。どうしようもなくやるせなくて、自分が不甲斐なくて、自信なんてぺっちゃんこになった。

何度も泣き、何度も心が折れ、何度も奮い立たせた半年を越え、11月30日。ワンマンライブには、どうにかこうにか60人ものお客さんを迎えることができた。

構成にも工夫を凝らし、最後まで飽きさせない展開は好評だったし、私の歌を聴くために集まってくれた人々の前で歌うのは、とても幸せで。

「みんなが幸せになりますように」

緊張も不安も吹き飛んで、ただそれだけを純粋に願えるような、いわゆるゾーンに入ったような気持ちになれた瞬間もあった。

最初に言われた目標の人数には届かなかったけれど、それでも大成功と言える日になったと思う。当日発売したCDやグッズもほとんどの人が買ってくれて、今まで見たこともないような売上になって…。

自分の音楽がたくさんの人に届くこと、自分の作ったものを誰かに受け取ってもらえること。それは未だかつてない、大きな喜びだった。

同じような活動をしているシンガーソングライターを見ていると、最初は50人、次は100人、その次は…と少しずつ規模を大きくして頑張っている人も多い。だから私も本当なら、「次は100人!」と言った方が良かったのかもしれない。

でもこの半年を終えてわかったのは、「みんなと同じ頑張り方じゃうまくいかない」ということ。「"ふつう" を諦める」と言って、会社員を辞めて音楽に振り切ったのに。結局私はまた、シンガーソングライターの "ふつう" に自分をはめようとしていたのだ。

ことごとく、人と同じ流れで同じペースで進めない自分が嫌になるけれど。どうやら自分に合う道を、作ってあげないといけないらしい。

正直もう二度とこんな半年は繰り返したくないけれど、踏み出さないと分からなかったことがたくさんあった。おかげさまで一回りも二回りも強くなれた気がする。

***

「私が私を表現できるようになるまで」の物語集。ep.7は、音楽に振り切ったものの、認められなさに絶望した2019年のお話。

「届かないかもしれない」なんてちょっと考えればわかることなのに、たぶんその怖さが踏み出せなかった理由の一つでもあるのに、直面する衝撃って思ったより大きくて。

何十人もお客さんがいるのに、何も言ってもらえない虚しさは、今も癒えない傷として残っていたりします。

そして、この半年が苦しかったのはたぶん、手段が目的になったからなのかなと。

目的はきっと素敵なライブをして、お客さんを少しでも幸せな気分にすることだったはずなのに。チケットを売ることが目的になってしまった時間は、本当に苦しかった。

でも、2019年にできるようになったことや分かったことが、次に活かされていきます。「自分に合う道」って一体なんなのか…?次回のお話も見守っていてください^^

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このお話をテーマにした動画を作りました。
テーマはオリジナル曲の、「Dreamer」。

物語編歌編と2つアップしているので、ぜひあわせてお楽しみください!


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