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【カサンドラ】 32. 絶男

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あの後何か会話を交わしたのか、
原田がいつどうやって帰ったのか、わからないけれど
気付いたら家にひとり、辺りが薄明るくなっていた。
悲しいわけでもなく、腹が立つわけでもなく
ただ何時間もベッドの上を動くことができなかったようで
先程火を点けようとした煙草はサイドテーブルに転がったまま
昨晩と同じ風景が静止画のように広がっているだけだった。


本当に、よく覚えていないのだけど
ただひとつ、強い決意が芽生えたあの感覚だけが今も身体に残っている。


もう二度と、恋をするのはやめよう。
もう誰の恋愛対象にもならないように。
もう誰にも女として見られることのないように。

僕は、性別を捨てた。

>>


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