「河原」

なんだか歩きにくくて
頁をひらくと
そこには丸石しかなかった
角が立たないようにもともと
生まれついている
川辺には
どの石もほんとうに丸く
こすれあって磨きあって
遠くに
流れてゆくものを見ると思い出す
きみの
眼球も指先も丸かった
そうじゃないものは
まなざしと毛先くらい
間違ってなんかない
あそこで流れてゆくのは
時だ
手元の方は速く
中央にいくにつれて
ゆったりと
その証拠にここには
日にさらされた丸石ばかり
身を寄せ合って乾いている
だれか階段をください
ここに似合わない
真四角な石を積んで
堂々と積んで
たかいところからひと思いに
栞をはさむ
この身を投げにいくための
階段をください
そしてまた
ひとつの丸石が
下流で打ち上げられる
流れやむことのない時の
河原で


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詩誌『詩と思想』2022年9月号読者投稿欄
選外佳作でした。(清岳こうさん選)

もう一篇の詩「am4:41」は
入選でした。(誌面掲載・尾世川正明さん選)

ありがとうございます。

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