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On Air from Fukuoka #4

福岡あるいは九州に在住、または以前住んでいた方や出身とするモッド・レジェンドたちにあれやこれやと突撃インタビューをするコーナー。
今回ご協力していただくいたのは90年代後半からバンド<The Hoovers>でのご活躍を皮切りに、現在<tv.orphans>で活躍されているレコード店オーナーのKurachi Takashiさんです!

Kurachi Takashi

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◆インタビュー

モジュール(以下m):どうもご無沙汰しております。最近コロナという事もあって誰にお会いしてもご無沙汰なんですが(笑
本日はどうぞ宜しくお願いします!

クラチ(以下K):宜しくお願いします!

m:僕が20歳の頃オーガナイズしてたイベントでのバンド、DJ出演などで大変お世話になりました。
当時、バンドでのセットリストやクラチさんのDJでの選曲を聞いてマニアックな曲に詳しい印象でした。レコード店の店員さんという事も含め、音楽に対する知識は相当な物だと日々感じておりますが、クラチさんの音楽にハマるキッカケとかは何だったのでしょうか?

K:最初は中学に入るときにダブルラジカセを買ってもらい友人に借りたテープのダビングや、ラジオのエアチェック、レンタルで借りてダビングしたテープを聴いてました。レコードは年に数枚しか買えなかったので... 
" カルチャークラブ " や " デュラン・デュラン " に始まり84~86年の洋楽ヒット曲を主に聴いてた。
あるとき深夜のビデオクリップが流れる番組で " デビッド・ボウイ " のブルージーンを観てカッコいいな!と思ってた時期、友人2人と同じく音楽好きの従兄弟のお兄さんにボウイの話をしたら、ヒーローズやジギー・スターダストやステーション・トゥ・ステーションなど色々テープをくれて... 最初に古い音楽に興味持ったのはその時と、少し後追いの "ハノイロックス" の影響ですかね。
最初に買ったCDは高校入学時の " ニューヨーク・ドールズ " の2in1だったし... 振り返るとこの時期はボウイが関わったアーティスト(イギー&ストゥージズ, ルー・リード, モット・ザ・フープル等)とハノイロックスやマイク・モンローがカバーしたバンドで大半を占められてるのかもなとも思います...


m:そんな少年期から音楽に目覚められたのですね!中学生でレコード買うとかビックリです(笑
その後いまは亡き " 古川さん " のレコード店【ビッグビート(*1)】で働かれる事になるのですが、オープンから今に至るまでのお話を聞かせていただけますか?

K:【久留米市(*2)】のビッグビートは1980年オープン。
その頃の事は実体験ではなく聞いた話ですが当時チェッカーズが結成された時期でもあり映画【アメリカングラフィティ】の影響もあってオールディーズ、ロカビリー、ドゥーワップなどの輸入盤がよく売れたと聞いております(同時に"めんたいロック(*3)"も売れてた)
自分が通いだした90年頃はちょうど60年代ロックに興味持ち出した頃で、オーナー古川さんの趣味全開で福岡市のレコード店より充実した品揃えだったのもあり週1くらいで通ってました。
顔を覚えてもらう事に始まりオーナーとの距離も縮まりそのうちバイトするようになったんですよ。
店を閉めた後は毎度のように吞みに連れて行かれ、更に自宅に寄って夜な夜な音楽ビデオを観ながら呑むという... 今みたいにYouTubeで何でも観れる時代ではないので輸入盤のビデオやブートの映像なんかは夢みたいなモノで... 動くクリエーションや13thフロアー・エレヴェイターズやアウトサイダーズとか色々教えてもらいました... 古川さんが2003年に亡くなって翌年から僕が名前を引き継いで福岡市で友人と始めて現在は不定期で細々とですが今も営業してます。

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※久留米ビッグビートのカウンターで古川さんと

m:80〜90年代、古川さんがやられていた23年間知らない事だらけです。僕は4, 5回しか行けませんでしたがそれでも久留米のビッグビートに行けたのはいい思い出です。
レコード店に勤め始めその後結成されたバンド " ザ・フーバーズ "のエピソードなどあれば教えてください。

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※古川さん在籍時の初ライブ・初ワンマンライブフライヤー


K:結成は1997年。
当時のメンバーは古川さん、店のお客さんでもある友人のバタヤン、そしてその友人で【ロデオ(*4)】の元ドラマー、フミオ氏でスタート。
何度かメンバーチェンジがあって2000年から音源を出したメンバーで3年くらい活動。ライブは100本以上はやりました。
古川さんは60年代音楽のコレクターでヴィンテージ楽器や機材のコレクターでもあったのでバンドを去った後も殆どの楽器や機材を無償で提供してくれました。
VOXのアンプもギターもベースもLudwigのドラムセットも... 普通に考えたらありえない事なんですがビッグビートの社運をかけてたみたいな...笑
あと自分達はガレージイベントではモッズといわれ、モッズイベントではガレージと言われ、パンクイベントではガレージと言われるような収まりの悪さはありました...笑
本人達は割と " プリティシングス " とか チャンツR&Bのあの感じを目指してたつもりなんですが...
そんな環境の中、フーバーズにとっては唯一の場だったかも知れないけど福岡のモッズ系のイベントでは暖かくというか激しく迎えてくれて... 意識的にセットリストにも入れてた"エキサイターズ"が演ってる<テル・ヒム>とか、インストの<フィンガーチップス>の時は大暴れされてる印象が...
まぁ楽しかったですね!

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※古川さん脱退後第二期フーバーズ(ドラムはフミオ氏)

m:古川さんは僕の主催イベントやキースにもよく足を運んでいただいた印象です。フーバーズの初期メンバーだったなんて僕は知りませんでした!
古川さんのコレクター事情やビッグビート以前のお話をもっと詳しく聞いていいでしょうか?

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※GEE FURUKAWA(1951.12.16-2003.11.6)


K:古川さんは1951年生まれ(グレッグ・ショウの2歳下)だから20代後半で脱サラしてレコード店をスタート。
13歳の時にラジオから流れた<アニマルズ/悲しき叫び>(Bring It On Home To Me)を聴いた時に人生が決まったと...笑
凄いなと思うのが15歳の時に<クワイァー/冷たい初恋>と<ムーヴ/緑の草原>のシングルを近所のラジオ店でお取り寄せして新譜で買ったと...
ビートルズを筆頭に60年代のビートバンドが1番好きだっけどティーンポップやガールズ物やオールディーズ、サーフィン/ホットロッドやインスト、後年は楽器欲しさにレコード手放してたけどパブロックや初期パンク、ネオモッズや80sのネオガレージも好きでした... よく言ってたのがビートクレイジーの為に「70年代にはフレーミン・グルーヴィーズがいて、80年代にはミルクシェイクス、90年代にはカイザーズがいた」と...

楽器の収集は一時期はギター&ベース類で100本以上、VOXアンプも各種、オルガン数台、ドラムセットも数台、シタールも2本と... 楽器は磨いて眺めるのが好きとか言ってましたけど(笑 VOXとリッケンバッカーに異常な執着がありましたね...
あと曲はよく作っておられました。冗談半分で自称 作曲家と言ってましたから。何かと何かが合体したような曲や大体がマージー調でまぁまぁいい曲もあったのですが、バンドには合わないと言うとこれはクラチ君のソロ用って「Visions~君のおもかげ」とかタイトルも決めてあって...笑

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※ミウラ&トヨフク加入の第三期フーバーズ

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※音源のリリース、ツアーを回った第四期フーバーズ(オサムヘヴン加入)


m:古川さんのコレクター魂凄いですねー店だけでなくその精神をクラチさんが引き継ぎフーバーズが産まれたのですね!
ご出身?当時の勤務地の久留米市は音楽関係に留まらず数々の有名人を排出しておりますが、クラチさんがご存知な範囲内で70年代〜90年代の久留米という街はどうだったのでしょうか?

K:自分も古川さんも久留米出身では無いんですが独特な地場はありますよね。人伝に聞いた話ではチェッカーズの前身グループ【カルコーク】は本格的なドゥーワップバンドだったみたいで、その後輩の方達もドゥーワップバンドやってたり、ストリートコーナーではないんだけど筑後川の土手の橋の下でハーモニーの練習してたと聞いてます。
 "クールス" は特に人気が高くてロックンロールやロカビリーのファンも多かったです。

あと初期には古川さんも参加してたシャナナのコピーバンド、Na Na Shaてバンドは何度かライブ観ましたが最高に楽しかったです!

90年代の半ば頃は普通にメロコアとかが売れてましたけど...


m:久留米にはザ・トラベラーズなどの有名バンドもいる事が当時のシーンの熱さと現在がリンクしてますね。
フーバーズのお話しをもう少しお聞かせください。ライブを3年間で100本以上やられていたと先程お聞きしましたが、県外などのライブ遠征、ツアーなど何かエピソードがあればお願いします。

K:初遠征の東京は2000年。
5.6.7.8s(ゴロッパチ)に呼んでいただいて行ったのですが着いた日に "フェルジ" 、" マーキー " が出演してた<高円寺・UFO Club>のイベントに出て、そのまま<新宿・JAM>に移動してイベント " Facing Fact " で告知無しでライブ演ってそれまでDJで踊ってたお客さんがステージ前に誰もいなくなるという... 翌日は福生の<Red Bird>で " Garage Rockin Craze " でまたオールナイトとか福岡ではありえないようなスケジュールで知名度も売る音源もないような地方のバンドをよく呼んでくれたなと感謝しかないです。その時期から東京や関西のガレージ系バンドが福岡にライブで来る時に前座で指名してもらえるようになって、観に来てて友人になった人が福岡でイベントを始めたり...
" ニートビーツ " や " ギョガンレンズ " なんかの九州ツアー時は一緒にまわって鹿児島や熊本はオマケみたいに僕らが付いてくるという...笑 関西は大阪に初めて行った時に見てくれたバンドの方から直ぐまた誘ってもらって2カ月後には大阪、神戸と... その時に出会った " ヤング・ペンシルヴァニアンス " からはその後も何度も呼んでもらい年に2回くらいは行ってました。

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※フーバーズ自主制作CD。
のちにニートビーツの真鍋氏の目にとまり、マジェスティックからの7インチの発売が決まる


m:当時の人気ガレージバンドの名が連なってますね!フーバーズもその中に横一列に並ぶ実力として認められてた証ですね。
多忙な中、フーバーズは解散となるのですが、その後のお話をお聞かせください。

K:フーバーズの後も "クロックワーク・オニオンズ" 、"ラ・ラ・リーズ" と1部の元メンバー達と60'sに影響受けた音楽のバンドをずっとやってきたのですがメンバーが辞めたりとかで活動が詰まってしまって 2013年頃からもっとパンキッシュな今のtv.orphansを結成して今に至ります。
3つのバンドでシングル1枚とオムニバス2枚に1曲づつ音源を出してもらえたのは幸運でした。

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※Clockwork Onions

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※tv.orphans

m:ニートビーツの真鍋さんのレーベルからのリリースなど、音源も素敵でした!
バンド活動と並行してイギリスの方にも何度か行かれたとお聞きしてますがその時のエピソードなどあれば。

K:イギリスには3回行きましたね。
イギリスには3回行きましたね。
95年、99年、2000年と... 目的はロンドンの空気を吸うことと殆どレコード屋だったのですが... ブライトンやダートフォード、カーナビーストリートとかビッグベン前やハイドパークやウォータールーとかも行きました… ライブもいくつかは観れてダムドやウィルコ・ジョンソンとか... 1番残念だったのが95年のカイザーズで深夜の会場には着いたのですがソールドアウトで中に入れてもらえなくて、入り口の看板の日付は1965年になってました...


m:ガレージ、パンク、モッズなど幅広い知識とリスペクトも含め音楽活動をされていると思いますが、この近いようで異なる3つのジャンル、それぞれの相互関係や特徴など何か解説していただけますか?

K : 解説は難しいな...笑
ガレージもパンクもモッズもどれも大好きですね!そして色々バンドを聴いていくとどこかで影響だったり繋がっている部分もあったりするかと!?
パンクもそうだけどザ・フーやスモールフェイシスなんかはビデオで動いてる姿を見たときに衝撃的に格好よくて20歳頃にモッズや60sにかぶれた時はより純粋になった気になる為、それまで好きだった70年代のハードロックなどはもういいかなと思ったりもしましたがやっぱりパンクとかは好きだったし...
レコード屋さん的に希望を言うなら自分の好きなロックには若い人にも聞き継がれていって欲しいですね。あと色々聴いたりライブを見に行った方が楽しみも増えると思う。

90年代には福岡でもキンクスやイギー・ポップ、再結成セックス・ピストルズやジョナサン・リッチマンやパティ・スミスやポール・ウェラー、レジロスやヘッドコーツ & ヘッドコーティーズやN.R.B.Qからチャック・ベリーやボー・ディドリーなんかも観れたのは今からするといい時代だったなと思います...


m:確かに音楽の幅って広がると何年も前に聞いた音楽が違う音に聴こえてきたり、そしてまた別の畑(ジャンル)に行き再度戻ってくるとまた違うものに... 音楽ってゴールと正解はない、それだけに自己の解釈や表現があるので楽しいしやめられませんよね!
最後にお決まりの質問で締めさせて頂きますが、クラチさんにとってのモッズとは?

K:スティーヴ・マリオットとレグ・キングでいいんじゃないですかね?!
スモール・フェイセズとアクションはサウンドもヴィジュアルも完璧でしょ!!

m:フーバーズのお話をはじめ、久留米のコアなシーンのお話しまで楽しくインタビューさせていただきました。
本日はありがとうございました!


■インタビュアー:fame the mod(コウジ)/(module)


◆脚注

*1)ビッグビート
久留米市に1980年オープン。福岡県で現存するレコード店でいうと田口商店、ジュークレコードについで3番目に古い。
チェッカーズの鶴久氏、デビュー前のナンバーガールの向井氏は常連だったとか。

*2)久留米市
福岡県の中央部に位置する福岡県第3位の人口を誇る街。チェッカーズを排出した事で有名な都市。
鮎川誠(シーナ&ロケッツ)、石橋凌(ARB)、ザ・トラベラーズ(ベーシストの武田圭治はチェッカーズの名付け親)が有名。

*3)めんたいロック
1970年代から1980年代にかけて福岡市などを中心に勃興したロック・シーンでありロック・ムーブメントである。

*4)ロデオ
福岡のパンクレジェンドOEC氏のパンクバンド。


◆プロフィール

クラチタカシ(tv.orphans)
1971年 福岡産まれ
バンド The Hoovers ~ Clockwork Onions ~ tv.orphansのヴォーカル担当
福岡市でレコードショップ BIG BEATを日曜日と平日(月曜~土曜)は夕方からの不定期で営業中。
ご来店希望のかたはbigbeat1965@gmail.comで営業時間帯は事前にお知らせできます。

■BIG BEAT
住所:福岡県福岡市南区大楠2丁目17-3井谷ビル307
問合:bigbeat1965@gmail.com

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