「天に向かい、光を感じる」

坂東玉三郎さんのインタビュー記事より。 

ー天に向かう気持ちー

神様を僕の中でどう具体的に感じるか。
それをはっきりということは難しいですね。

ただ天に向かう気持ちというものがなければ、 歌や踊りという芸能はできません。

お客様のためにとか 生業としてだけでは、できないんです。

「天に向かう気持ち」

それは、いわゆる宇宙とか、
晴れた青空とか、
夜の月とか星とか、

そういうものに向かってひたすら修行をし、 自分が勉強してきたことの結果を見ていただこう というもの。

そんな気持ちが自分の中になければ
舞台に立つことはできません。

芸能は、劇場の中で完結しないことが大事です。
想念が外に出ていないとね。

神社仏閣の中でのお祈りも一緒でしょう?
祈りは建物の中で完結するものではないはずです。

そこから空に抜けていく想念があるからこそ、 祈りになる。

劇場も神殿も、
雨風を防ぐために屋根があるというだけで、 空に抜ける「氣」というのは別なんです。

舞台開きのときは お祓いとかお清めとか、 神事がつきものですよね。

舞台の上を汚さないということも、
芸能がどこかで神事とつながっているからだと思います。

相した考え方が根底になければ 正しい芸能に向かうことはできないと思うのです。

なにが「正しい」のか。
それを定義することはできません。

でも、正しいか正しくないかということを 自分で反省するために、「どうでしょうか?」と
天に向かって問う気持ちがあれば、
自分のここが違っていたんじゃないかとか、 わかってくるのではないでしょうか。

踊り手にそういう観念があると、
観ているほうにもある種の浄化作用が生まれます。

踊り手を通して自分たちも 上を、空を、見ているんでしょうね。

それが芸能だと思います。

だから、 もちろんお客様のためなんだけれども、 そのためだけじゃない、

お客様も、 踊り手の具体的な振りを見るためだけに 来てるんじゃない。

どこかに非現実的な空間の想念があって、 一緒に高い次元に行けるからこそ、 劇場に足を運んでくださるんでしょうね。

それは双方にとっての 浄化作用としかいいようがないと思います。

そのときの気持ちを 気分がいいとか、楽しいとか、 そんな風に表現しているのかもしれません。

「天に向かい、光を感じる」2 形と心へつづく

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