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名前の由来【スpラ二次創作・カナちゃんとガジェくんシリーズ】

傘のイラスト:イラストAC

※この小説は、splatoonシリーズの二次創作です。
 オリジナルイカ(オリイカ)とオリジナルシャケ(オリシャケ)が中心のお話です。
 独自設定あります。
 今回はsplatoon3のキャラクターも少し出てきます。



そんなこんなで、コウモリくんはあたしの家に一緒に住むことにした。
誘拐事件の事は、まだ気にするヒトはいるけど、みんな深追いしない。
でもまさか、家に着いてからもほんのちょっとした試練があるなんて、
着いた直後は、全然思わなかったのだ…

コウモリくんは、来て数日間はあたしの家のタンスの隅にずっと隠れてた。
ちなみにこの時はあたししかおらず、他の誰も来なかったのにもかかわらずだ。
幸い、レンチンするだけで出来るご飯があったので、
それをコウモリくんにも上げてたので、空腹にはならなかったけど。
でも、あたしに万が一、もしかしたら億が一 何かあった場合には、
下手をするとコウモリくんはしなしなになってしまうかもしれない。
何とかせねば!と思い、コウモリくんにどうしたらタンスの隅や外に
出られるかを聞いてみた。
すると、コウモリくんはあの時と同じ細々としたような声で言う。

「あ、あ、あの…。く、黒か…深いあおい、ろか、緑、いろの、シェルターと……、あ、ア、タマギアがほ、ほしいんです」
「あ、アタマ、ギアは…こういう感じの…で……」

コウモリくんがヒレを差す。
どうやらスパイガジェットのようなシェルターと、キャップの付いた帽子のような頭ギアが欲しいらしい。
コウモリくんの、なるべく目立ちたくない!という気持ちが心で伝わってきた。

「分かった!試合が終わったら探してみるね!」
「あ、ありが、とう…ございます……。よ、よろ、しく、お、おねが、いします…」

そうして、今日もコウモリくんにお留守番を任せて、あたしはいつも通りバンカラマッチの試合に行く。

その日の結果は、合計で半分勝って半分負けた。
まあ、半分勝ったらいい方だ。お金もそこそこ貰えた。
あたしはいつも通り、友達や戦ってくれたヒトたちから期限が近いフードチケットを貰い、おばちゃんに頼んでご飯を食べる。
ちなみに他のヒトたちは別の場所で食べるということで、ロビーのロッカー室前でお別れした。
7皿のフードと15個のドリンクの食事が終わって、
あとは少しのメインセーブレモンと1皿のアゲアゲバサミサンドだけとなった。
ふと、少し前に発売された雑誌を見た。
突然止まったページを見ると、スパイガジェットのようなシェルターと、
黒っぽい帽子のギアに丸が付いていた。
あたしはそれで、コウモリくんにこれ買ってほしい!と頼まれたことを思い出した。

(ヤバッ、すっかり忘れてたわ!)

ラッキーなことに、頼んだご飯やドリンクはもう少しで全部終わりそうなので、
すぐにでも行けそうだ。
あたしは急いでフードとドリンクを食べて、おばちゃんにお礼を言って
ロビーを出た。
ええと、今のザッカ屋とアタマ屋は…
よかった!まだどっちも開いてる!
あたしはまず、ザッカ屋の方に向かった。

「いらっせーませー」
相変わらずパル子ちゃんのやる気のなさそうな挨拶が聞こえる。
その上店長はどっか行ってるし。
でも、こんな店でも意外と繁盛してるっぽかった。
まあ今は当然それよりも重要な事があって。
お目当ての黒っぽいスパイガジェットのようなシェルターは、意外とすぐに見つかった。
あたしはパル子ちゃんに聞く。

「あのさ、これとあるヒトに普段使いするために渡したいんだけど、いいかな?」
「あ、そんなでもぜんぜんいいっすよー」

めちゃくちゃあっさり貰った。
まあ厳密にロッカーに飾れ!というのでも全然なさそうだし、ちょっと普段使いしても全然いいのだろう。
というわけであたしはパル子ちゃんにお金を払って、次はアタマ屋に向かった。
久々に行くけど、この程度の階段を上るのなんてたいていのバンカラ地方民には楽勝だ。
もちろんあたしもね!

軽快な足取りでお店に行くと、ふたりはいつものように挨拶する。

「っしゃいあせー」
「らっしゃい!」

アタマ屋、フク屋、クツ屋には、ナワバリやバンカラマッチ専用のギアだけでなく、普通にオシャレアイテムで使えるものもたくさん売ってる。
なので、あたしは雑誌を見ながら目当てのものを発見するのも、そう難しいものではなかった。
キャップという、前につばが付いてるタイプのいわゆる帽子だ。
周りにつばが付いてるタイプの帽子もあったが、コウモリくんにはこっちが
似合いそうだと思った。
一応、「ナワバリなどで使用しないで下さい」の注意書きが書かれてあることを確認し、その帽子を買う。
ふたりのいつも通りの声が聞こえる。
あたしも足早に店を出る。

階段を降り切ると、ふといつもよりも疲れていることに気が付く。
2か所のお店に寄っただけなのに、驚いた。
とりあえず、体が「これ以上たくさん歩くと大変!」と警告を出してくれてるようなので、今日は電車で帰ることにした。
ゲソがもったいない感じもしたけど、今日はコウモリくんにプレゼントを渡すから特別だと心の中であたし自身に言葉をかけた。

電車に乗って10秒後に、扉が閉まった。
過ぎ去る景色が早い早い!
歩くと1時間半から2時間で家に着くのに、電車だとあっという間につきそうだ。
みんなが電車を使う理由が分かった。
最寄りの駅までもうすぐだ。
でも座ってたからか、うっかり寝てしまう所だった。
電車からの声で頭も起き、最寄り駅で扉を開いたらすぐに電車から出た。

そして、自宅へは10分くらいで着いた。
ドアを開ける。コウモリくんは、少し向こうで隠れながらも、「ただいま」と言ってくれた。
リビングに行き、今日買ったシェルターと帽子を渡す。
どっちもコウモリくんは喜んでくれた。

「あ、あ、ありがとうございます!
こ、これで、そ、外に…で、出られます!」

そう言ってコウモリくんはすぐに帽子をかぶって、シェルターを差した。
髪型が、ポニーテールみたいになった。
その恰好をしたコウモリくんは、穏やかに笑ってるように見えた。
でも、何か不安そうだ。

「これでも、ま、まだ、ばれ、るかも、し、しれません……」
「えーそうかなー?そんな髪型のシャケなんてあたし知らないよー?」
「で、で、ですが……」
「あ、そうだ!ひとまずこれもつける?こんなカッコいいシャケなんて
いないってみんな思うって!」
「え、あ、あ。ありがとう、ございます…」
「そうだ!せっかくだしさ、コウモリくんじゃなくて、
君だけの名前も付けよう!」
「あ、そうですね…。そうすれ、ば。シャケだと、ばれ、ない、かも…?」
「うーん、そうだなあ…。
あ、そのスパイガジェットのシェルターみたいのを差してるから、
『ガジェくん』はどうかな!?」
「え?あ!い、いい、ですね…!では、ひとまず、それで…。
それ、にして、も…、こんな、ごく、短い、言葉、でも…、名前って、みなさん、分かる、の、す、すごい、です、ね……」
「えー、そう?普通じゃない?それに、『ガジェくん』なんて名前、
まわりに全然いないし!絶対ガジェくんはガジェくんって、みんな分かると思うよ!」
「そ、そうなん、ですね…!あ、ありがとう、ございます…」

ガジェくんは、下を向いてシェルターで隠してしまったが、少し見えるその顔は少し嬉しそうだった。

こうして、この日はコウモリくんにシェルターと帽子と、簡単だけど名前をプレゼントした。
そして、フクの存在をすっかり忘れており、思い出したのは、次の日になってからだった。

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