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#22 〈金地金編〉密度が大きい金属の発見

金(ゴールド)は古くから知られていた金属ですが、その他に古くから知られ使われていた金属として銀、鉄、銅、スズ、水銀、鉛があります(1)(2)。

それぞれの金属の重さはどの程度のものなのでしょうか?
密度を小さい順に並べると次のようになります(3)。

スズ
元素記号:Sn
密度:5.769g/cm3(αスズの密度)


元素記号:Fe
密度:7.874g/cm3


元素記号:Cu
密度:8.96g/cm3


元素記号:Ag
密度:10.49g/cm3


元素記号:Pb
密度:11.34g/cm3

水銀
元素記号:Hg
密度:13.534g/cm3

金(ゴールド)
元素記号:Au
密度:19.30g/cm3

この7種類の金属の中で、金(ゴールド)の密度の大きさはダントツでです。

常温で液体である水銀と金(ゴールド)の判別は容易と考えられます。水銀の次に密度が大きい金属は鉛です。鉛の密度(11.342g/cm3)は、金(ゴールド)の密度(19.30g/cm3)と比べると、2倍弱の開きがあります。

アルキメデスが考案した浮力を利用した金(ゴールド)の鑑定方法は当時ではとても有効な方法だったと考えられます。

ところで、鉛に金(ゴールド)をかぶせたニセモノの金(ゴールド)が古代の遺物として発見されています。

これは鉛が融点327.46℃と低く加工しやすいことに加え、利用できる金属の中で金(ゴールド)の次に密度が大きかったからなのでしょう。


時代が下り、18世紀、19世紀になると様々な金属が発見されます。その中には金(ゴールド)と同じくらい大きな密度のある金属が少なからずありました。

それらの金属を密度を小さい順に並べると次のようになります。

ウラン
元素記号:U
発見年:1789年
密度:19.1g/cm3

タングステン
元素記号:W
発見年:1781年
密度:19.25g/cm3

※※金(ゴールド)※※
密度:19.30g/cm3

プルトニウム
元素記号:Pu
発見年:1940年
密度:19.816g/cm3

レニウム
元素記号:Re
発見年:1925年
密度:21.02g/cm3

白金
元素記号:Pt
発見年:1748年
(古くから知られていたが、新元素と認識されたのはこの年)
密度:21.45g/cm3

イリジウム
元素記号:Ir
発見年:1803年
密度:22.56g/cm3

オスミウム
元素記号:Os
発見年:1803年
密度:22.59g/cm3

およそ2g/cm3の密度の差で8つの金属が並び立っています。このような状況では、密度の違いを利用して金(ゴールド)の真贋を鑑定するアルキメデスの方法は有効とは言えません。



(1)ほかにもアンチモン(元素記号Sb)がありますが、後の錬金術と強い結びつきがあるこれらの金属に限定して話を進めます。

 余談ですが、アンチモンは化粧品として使われていました。古代ローマの英雄カエサルとの仲で有名な女王クレオパトラも使っていたそうです。

(2)亜鉛(元素記号Zn)やビスマス(元素記号Bi)、そして後述する白金も古代から存在が知られていましたが、鉱物から金属単体として取り出されたのは後代になってからなのでここでは除外しています。

(3)各金属のデータは『ニュートン別冊 周期表 完全図解118元素事典』ニュートンプレス(2022)を参考(以下同じ)。いずれも常温での密度。

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