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#28 〈金地金編〉売り手が情報を開示する理由

2001年、ジョージ・アカロフ博士らが情報の非対称性が存在する市場の分析に関する研究を評価され、ノーベル経済学賞を受賞しました。

ここでいう情報の非対称性とは、売り手と買い手のあいだで取引される商品の質に関する情報に格差があるということです。

中古自動車の市場を考えてみましょう。

売り手は自分が取り扱っている商品である個々の中古自動車について、買い手よりも多くの情報をもっています。一方で、買い手は売り手ほど個々の中古自動車に関することは分かりません。

個々の中古自動車の品質が分からない買い手は、市場の平均的な値段で中古自動車を購入しようとします。

その場合、個々の中古自動車の品質を理解している売り手は、市場の平均的な値段よりも高く売れると考えられる高品質の中古自動車については、市場で売りたくないと考えるでしょう。

すると、高品質の中古自動車は市場から無くなります。市場に残るのは品質がそれほど良くない中古車ばかりです。

こうなると、買い手の側も当初の値段で中古自動車を買おうとしなくなるでしょう。それほど良くない中古車をそれなりの安い値段で買おうとするでしょう。

結局、中古車市場には品質がそれほど良くない中古車ばかりが残り売買されることになります。このような状況が続けば、市場は衰退し最終的になくなってしまうでしょう。

中古自動車には確かなニーズがあるにもかかわらず、また、売り手も買い手も合理的に行動しているにもかかわらず、市場がうまく機能しないため売り手も買い手も望ましい結果を得ることができていません。

その原因は、品質に関する情報に格差があるからです。この格差を解消することに努めれば、売り手も買い手もより良い取引をすることができます。


金(ゴールド)についても同じことが言えます。

金(ゴールド)の品質に関して売り手と買い手に情報の格差が存在すると市場がうまく機能せず売り手も買い手も望ましい成果を得られません。

ニセモノの金(ゴールド)で買い手を騙して儲けようとする者がいる一方で、鉱山会社や精錬会社など多くの売り手は品質の高い金(ゴールド)を正当な価格で販売したいと考えています。

金(ゴールド)が本物であること、品質が確かであることが売り手と同じように買い手も把握できればお互いに満足のいく取引をすることができます。

金(ゴールド)の品質をオープンにすることは、買い手だけでなく売り手にとっても金(ゴールド)の取引を円滑にするうえで非常に重要なことなのです。

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