朝のルーチン

#朝のルーティーン

眩惑。神仏の後光を眼前にして天界に拝んでいるが如く重々とした頭が、抵抗力を持たない事を察すると、そのまま闇の中へfall down。アビスの中で微かな残光を探して5分。再び目が覚める。手元時計ではとっくに30分が経過していた。依然として日は煌々としているが、人間時間の尺の関係でそろそろ睡眠を切り上げるほかない。立ち上がり、汗ばんだ利かざる手で寝癖の輪郭を辿り乍ら、利き手で蛇口の口を切る。しばらく洗面器を爬行する透明を見つめると、歯ブラシを濡らして全盛期のほっぺちゃんぐらいの歯磨き粉を載せる。パンケーキにクリームを載せる発想の起源はこれなんじゃないかと夢見心地に妄想すると同時に、ケミカルな清涼感で思考が徐々に明瞭になる。口内のウタカタを漱ぎ殲滅すると、徐にテレビの電源をつける。私は基本的に教育テレビしか観ないので、例に及ばずEテレをつける。オフロスキーが出てきた頃合いだった。オフロスキーというのは不思議なキャラクターで、教育番組特有の過度な燥ぎを満面に見せつつも、時々何処か虚無感を忍ばせた一面を見せる。その綻びから、幼児期の私でもオフロスキーの「仕事」感を抱かざるを得なかった。しかし、これは悪い事ではない。仕事でやっているというスタンスの高校教師の方が生徒から人気であるように、ドライな人格は子供にとっては羨望に寄与することが多々ある。事実オフロスキーは現役であるのだから、今の子供にもそういった一面が刺さっているのであろう。
ここで天啓。
―あなたが水を一杯注ぐとき、風呂場でオフロスキーがニヒルに笑っている―
そんなこんなで地底の恵と成獣の情に恩を抱きながら飯を食み、衣を改め、髪を社会通念に擬え、鍵を秘め、文明の利器の充足を確認し、靴紐を固く絞め、夢以上に混沌とした世界に繰り出す。まるで余裕そうであるが、臨む未来には遅刻可能性を強く内包している。
私は未来を変えに来た。脚よ、現実を呑むほどの力を魅せろ。樹を翻す颱のように。


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