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2023年度大学入学共通テスト(国語・現代文)概説

更新が滞りました。
そして、あけましておめでとうございます。

新年1回目は、本業に即して、1/14に行われた「大学入学共通テスト」の国語問題(現代文)の私見を示したいと思います。

【国語全体】
昨年度と同程度の難易度だが、各大問とも「ハマる」問に出くわしてしまうと、時間ロスのカバーがしづらいかもしれない。

① 評論
複数課題文型になって以降、「同じ話題→相違点」「異なる話題→共通点」を意識して読み解くことになり、今年度は前者のパターンの文章構成だった。
【文章I】の方はスムーズに読め主張も掴みやすいが、【文章II】は、「キーワード」(=「動かぬ視点」)の正しい理解がないと、理解が遅れてしまう可能性がある

(問2)「子規にとってガラス障子の果たした役割」をまとめられれば容易。第1~3段落まででまとめる。
(問3)問が「筆者がそのように述べる理由」となっているので、「判断の根拠」が問われており、【文章I】における「ガラス障子=『視覚装置』」の内容をまとめることになる。第3段落後半~引用文~傍線部までが設問の担当範囲。
(問4)傍線部Cを含む段落から文章最後までをまとめる問題。ル・コルビュジエが窓を「外界を切り取るフレーム」と捉えている点、引用文に「景色を望むには、むしろそれを限定しなければならない~壁を建てることによって視界を遮り、~水平線の広がりを求めるのである」とある点を合わせて考える。
◎(問5)ここが1つ目の得失点の分かれ目か。【文章II】全体から考えればよいのだが、ここでは「窓」ではなく「壁」のもつ意味、さらにそれによって住宅がどのような空間になるかが問われている。傍線部が「壁=風景の~構造化」とあるので、「壁によって『景色を限定する』→動かぬ視点をもつ『風景』の誕生→ル・コルビュジエの考える住宅像(=沈思黙考の場)」という、文章の流れに即しているものを選ぶ。
複数課題文型では、長い文章(ここでは【文章I】)に傍線の数が多く偏る傾向があるので、この問を傍線部周辺だけで解こうとすると、時間ロスに繋がる可能性大
(問6)生徒の会話文中にある空欄補充の形を取った、全体把握問題。私立大の空欄補充問題と同様、空欄の前後の表現をヒントに、課題文の読むべき箇所を特定し、まとめる必要がある。
X=直前・直後の生徒Bが、【文章I・II】それぞれのル・コルビュジエの引用文から受ける印象の違い(内容はほぼ同じだが、【文章II】が一文多い)を述べているので、問4・5を踏まえておいたほうが取り組みやすかったか。特に【文章II】の引用文は「壁」の説明で終わっていることに注意。
Y=子規にとってガラス障子がどのような役割を果たしたかがわかっていれば、比較的容易。問2と関連。
◎Z=2つ目の得失点の分かれ目。ここでは「【文章I・II】を関連づける」ことが前提なので、選択肢前半にある「子規にとって、ガラス障子を取り入れたことで何を得られたか」を検討する必要がある。
よって、
【文章I】:①「書斎→見るための装置と変容した」
      ②「窓=限定された景色を眺める視覚装置」
【文章II】:①「住宅=沈思黙考の場」
       ②「風景=動かぬ視点をもつ」

を組み合わせることになる。
ただし、上記の関連は本文中に明示されてはいないので、消去法で解くのが得策か。これも時間がかかってしまう可能性大。

② 小説
珍しく傍線が6本引かれ、問6までが説明問題であった。問7はいわゆる「まとめ問題」だが、問われていることを正確に掴まないと時間がかかる
(問1)「何に対して『私はあわてて説明した』のか」が明確であれば容易。最初の段落+傍線部直前の会長の発言で検討する。
(問2)傍線を含む段落での「私」の考えをまとめる。最終的に段落最終文の「自分の間抜けさ加減に腹を立てていた」に繋がる選択肢を見つける。
(問3)「ここに至るまでの『私』の心の動き」が問われているが、傍線直前の「これ以上自分を苦しめて呉れるな」、傍線のあるページ中程の「私はある苦痛をしのびながらそれを振りはらった」に注目できれば、正答へ繋がるはず。
(問4)傍線を含む一文に指示語を含む内容(こんな日常)があるので、具体内容をたどりながら戻っていければ、解答は容易。傍線を含む段落で処理する。
★(問5)小説においては、「出来事→心情→行動/言動」がワンセットとなることを踏まえて考えると、傍線の4行前にある「水のように静かな怒り」から表れた発言であることがわかる。結果、選択肢の述部に注目すれば容易
★(問6)小説問題にありがちな「心情の変化」を踏まえた問。こちらも問4同様に、傍線を含む一文に指示語があるので、具体内容を押さえ(=傍線を含む段落をまとめ)ればOK。
◎(問7)問6までは比較的順調に進んでくると思うが、ここで難題。【資料】【構成メモ】【文章】と3つの参考資料があり、どれに注目すべきか一見わかりづらい。しかし、結局は第1問同様、空所補充問題のため、空欄の直前・直後にある表現をヒントにして思考する。
I=「広告」、「焼けビル(→注を参照!)」、空欄直後の「会長の仕事のやり方」に共通する要素を探す。会長の部分については、問2がヒント。
◎II=空欄を含む一文が「そこで」で始まっているため、前文を確認すると「具体的な未来像を持つこともないままに会社を辞めた」とあるので、「『かなしくそそり立っていた』という『焼けビル』」は「マイナス」の状況の象徴となる。これを問6のように「プラス」内容の象徴と読み取ってしまうと、③もしくは④へと誘導されてしまうので注意。

以上、初めての講評により、説明の至らない点もあると思いますが、ご寛恕ください。

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