介護の日々と私「母のこと。その5」

3か月に渡る母の入院が終わり、家に帰宅する日がきた。コロナ禍で直接会う事ができなかったので、母が生きて帰ってきてくれるのだという嬉しさ、安堵感と共にこれからしっかりやっていけるだろうかという大きな不安が入り混じった気持ちだった。

病院に着くとすでに荷物はまとめられていて、出発できる状態だった。介護用タクシーで帰宅した。
帰宅してまもなくするとこれからお世話になる往診の先生や訪看さんが来て、早速診てくれた。「まずはこの夏を乗り切りましょう」とのことだった。母の心臓は処方されている多量の薬で保たれているが、常に急変の可能性があった。それは私たちにも常に一定の緊張を強いた。

母自身もこの数か月、自分の身に起こった出来事からのインパクトが大きかったのだろう、自分が生きるという事に対しての自信をすっかり無くしているように見えた。しばらくは私たちに「世話になったな」「ありがとう」とお礼を繰り返したかと思うと、「今日で死ぬような気がする」と落ち着きがなくなり、息が苦しいと訴え、訪看さんに何度か来てもらい、診てもらったりしていた。訪看さんから母の状態を観察する時にどのような点に留意してみればいいのか等をずいぶん教えてもらった。脈がとんでないか、息が犬の呼吸のように早くなってないか、酸素濃度はどうか等をしっかり観察する必要がある事を知った。しかし慣れないこの状況に対応する私たちもしばらくはおろおろするばかりだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?