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映画に救われて

 「大学は人生の夏休み」という言われ方もされているようだが、社会人になった今になって思い返すと、決してそんなに楽しいものではなかった。

 あの頃はただ膨大な時間だけが目の前に横たわっていて、それさえあれば何でもできるような気がするのに、実際のところ何もできないような毎日だった。

 講義に出ようがサークルへ行こうが、何をしたところで日々を追うごとに将来の可能性が一つずつ失われるような焦燥感に襲われ、そこから逃げ出すかのようにお金さえあれば映画館へ向かった。

 そこではチケットを買って席にさえ座れば、外界から隔絶された暗闇の中で、わたしはしばらくの間わたし以外の人生を生きることができた。

 そうやって映画に助けられながら、やっとの思いで大学を卒業した。

 仕事に追われる今は大学時代のようにはいかないけれど、気分が落ち込んだときにはやはり映画を観ている。映画館へ行けないときは部屋を真っ暗にして、テレビやタブレットで映画を観る。

 きっとわたしはこれからも映画に救われながら年を重ねていくのだろうと思う。

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