見出し画像

フランス国家認定ダンス教師の資格を得る道④

ダンス教師認定の国家試験は毎年ダンスの歴史からスタートを切っているようです。
私は2024年4月29日が受験日でした。
受験会場は毎年変わるようで、2024年はモンマルトルにある地元の高校が受験会場でした。普段の学生生活も行われている隣で、別館では私たち100人ほどの受験者がシーンとした中解答を続けます。別館はチャペルです。美しいステンドグラスやシャンデリアを眺めながらの受験でした。人生初のパリの高校に侵入、チャペルの中で国家試験を受けているだなんて。。。と不思議な高揚感?を味わいました。

【フランスでの受験に対する姿勢の違い】
さて、試験内容をお伝えする前に試験中のゆるい点・厳しい点が日本と違ったのでお伝えしたいです。
基本ゆるいので厳しい点から。外国人には仏語辞書の持ち込みが許可されています。といっても、外国人は私ともう一人、同じ訓練所の同期ベネズエラ出身の仏語ペラペラの子しかいなかったわけですが・・・
彼女はスペイン語フランス語の紙の辞書をきちんと用意してました。
私はスーツケースの奥深くに眠っていた電子辞書の存在を思い出し急遽ひっぱり出してきたのですが・・・電子辞書はNGです。紙の方がNGなんじゃないの?!と思ったのですが、電子だとスマホのように調べることができるんじゃないの?日本語で書いてるからチートされてもわからないとのこと・・・電子辞書が存在していないのでいくら抗議してもダメです。あっさり鞄の中へ。ダメかなとも思っていたので大丈夫だったのですが・・・

受験票を渡してそれぞれ試験アシスタントにチェックしてもらった後、席を教えてもらいます。机には受験番号メモ書き用紙と耳栓が置いてありました。受験者はボールペンとアナログの時計を置くことを許可されるだけでなく、飲食も大丈夫です。なぜなら受験時間は4時間マックス。長丁場です。フランス人は受験経験から各々マドレーヌやらチョコやらリンゴやら、しっかり用意して机の上に。
初め度肝を抜かれたのですが、彼女たちが正しかったです。9時始まり13時終わりなのですがノンストップ。私は12時過ぎたあたりからお腹があまりにも空いて倒れるかと思いました。受験後楽しみにしていたインドカレーが五臓六腑に染みたのを覚えています。

【試験内容】
ダンスの歴史の試験は厳しいです。20問のQ&Aと3つの設問のうち一つを選んで書き上げるdissertationというちょっとクセのある小論文。20問のQ&A20点満点、小論文20点満点、小論文の方が2/3ほど割合をとった合計点を出し、10/20が合格ラインです。
私はdissertationが本当に苦手でした。何度も練習して書きましたがフランス人に勝てるわけがない。
dissertationとはざっくり書くと、設問に対し大まかなその概要を導入でまとめ、それぞれの章で設問に対するエビデンスを3〜4ほど示し、最後に結論プラスα(未来についての考察か疑問を投げかける)で終わらせるというものです。エビデンスの豊富さを示すだけでなく、どのように議論が発展させられるか、構成力が鍵です。そして結論では白黒をつけてはいけないのです。(白黒をつけるということは狭い議論の中で解答をどちらかに寄せるディベートのようなものになってしまうのでこれはdissertationにならないのです)
いかにもフランスらしいと心底思いました。こうしてフランス人が出来上がっているのだなぁと。
私はいつも10点以下、模擬試験や最終日に近づくにつれて10点や11点を取れたこともありますが、そもそもフランス語の言い回し、正しい綴り、dissertationの構成方法などマイナススタートです。2017年に初めてフランス語をはじめ、2022年にもう一回フランス語を磨くために語学学校に通ったので系2年程度の学習時間です。後悔しました。(その間はバレエのテクニックを磨くことに時間を割いていたのとコロナで2年間ほどstay homeです。この時にフランス語見直せばよかったと悔いても悔やみきれません)

そんな私、もしくは外国人が合格するためにやるべきことは1つ、20問のQ&Aで満点を取って総合点を上げることです。
メトロに乗っている間、リハーサルの間、家にいるときはひたすら暗記。綴りも間違えるとペナルティなのでノートが真っ黒になるまでちっこいスペースが紙にあると綴りを書きまくります。

結果Q&Aは19,75/20でした。一問綴りを多分間違えてしまったのでしょう、ペナルティがあったんだなと感じました。私は満点だと思っていたのであれ?となりました。問題のdissertationは10/20です。計画通りです。よって総合点はなんやかんや計算されて13/20で落ち着いたような気がします。
外国人泣かせのダンスの歴史。結果を聞きに行くときは本当に心臓が痛かったです。落ちているフランス人の子は結構いるので・・

【試験範囲】
Q&Aは中世〜現代(ヒップホップを含む)17問とジャズ3問という感じです。
中世は最近ではそこまで質問に出ないようですが、一応生まれたステップの名前やイタリア・ルネッサンスから出てきたステップに書かれたマニュアル本の名前や人名など覚えておきます。
重要なのはバロック時代、ルイ14世あたりからです。宮廷バレエが生まれたのでここからの出題は必ずといってあるかと思います。続いてバレエ・ダクション、ロマンティック・バレエ、クラシック・バレエ、ネオクラシック、自由ダンスとモダンダンス、バレエリュス、ポストモダンダンス、フランスの初期コンテンポラリーダンス、2000年以降のダンス・コンセプト、ヒップホップの流れとフランス、現在のフランスにある国立振付センターとその振付家たち、ベルギーの振付家などなど・・・ジャズはジャズで、アメリカでいかに発展したか、三角貿易の時代から始まりブラックカルチャーからショービジネス、ミュージカル、映画産業、フランスにジャズを伝えた振付家たちまでという感じでしょうか。

とても広いのですが、おかげで歴史を縦と横で、ダンスを軸に理解が深まりました。美術館に行った際や建築を見たり、そういった際に年代を見たときにあぁ、その時代はこういった文化が花開いてこういった踊りが踊られていたとサッと想いを馳せることができるようになりました。

試験の雰囲気や内容は伝わりましたでしょうか?きつかったけど自分の中ではいい財産になったと感じております。

それではよい一日をお過ごしくださいませ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?