第四章の振り返り
7月になり暑い日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?
さてBBSGでは7月から「第四章私たち不可知論者は」を読み、ディスカッションしながら進めています。この章は長いのでしばらくお付き合いください。
第四章は誰の為に、何の目的で書かれているか
まず中身に入る前にこの章の書かれた目的と、伝えたい対象者について考えてみます。
伝えたい対象者は不可知論であり、その不可知論者に開かれた心を持てるように手助けすることがこの章の書かれた目的だと書かれています。「ビッグブックの構造(書かれた順番とその意図)を理解するには何の為に、誰に向けてこの章は書かれているかを意識している事は大切ではないか」という指摘がミーティングの中でありました。
本物のアルコホーリクが対象のプログラム
第四章の冒頭の文章をみていきます。
前回取り上げた狂気のはなしは「あなたが本気で酒をやめたいと思っているのに、きっぱりやめられないようなら」に前々回取り上げたアレルギーのはなしは「あるいは飲んでいて酒量がコントロールできないようなら」に対応します。医師の意見から第三章まで読み進めてきた人は、自分が本物のアルコホーリクであることを認めていること、つまりステップ1をすませていることが前提として書かれています。この章の対象者は、自分が本物のアルコホーリクであることを認めているが、だからといって神に助けてもらうという考えには抵抗感のある人となります。
不可知論とは何か
不可知論という言葉は聞きなれない言葉です。どんな意味なのでしょうか。
大辞林4には
神がいるか(またいないことについても)は人間には知ることはできないという立場といえます。私たちの考え方にひきつけると「いるのかどうかはわからないし、自分の人生には関係のないこと(少なくとも自分の人生には介入してほしくない)」という態度ともいえます。詳しくはこちらを参照してください。
自分由来の力では助からない事実
①自分由来の力(理性、努力、意志の力等)では飲むのをやめることはできなかったという事実から(ステップ1)②自分を超えた力を頼るしかないのではないかと問いかけてきます。(ステップ2)「スポンサーとしてステップワークをする時に必要なのは、スポンシーさんがこの二つの事実にいかに直面して受け入れられるよう手助けすることである」という指摘もありました。そのためには通りいっぺんの知識ではなく、相手との応答の中で考えていくことが大切だと考えます。
必要な力がないこと
自分ではアルコホリズムを解決することはできないと心から認めることができたら、藁にもすがる気持ちで自分より大きな力を見つけたい、という願望が出てきます。ステップ1とステップ2は紙の表と裏のようなもので片方だけ受け取ることはできないと言われる所以です。力の場所(どこに)は頁81に、見つけかた(どうやって)はステップ3以降に取り組む事を指します。
詳しくは、該当頁にきたところで取り上げます。
この本の主題(main object)
翻訳に揺らぎがあるようで、原文の意を汲むとこうなるようです。
問題を解決してくれるのは力(神)であって、私たちがその力を身につけられるようにするプログラムではないことは忘れないようにしたいものです。
道徳とはなにか
道徳的であるだけでなく、霊的だと信じる本を書いた。とありますが道徳の意味について議論がありました。「ここでの道徳とは規範とは公衆でのマナーといった狭い意味ではなく、人間の側の営み、精神を指しているのではないか」という意見がありました。この後に取り組む棚卸しや埋め合わせも、人間の側の精神や対人関係に働きかけます。それと同時に、神の側である霊的な領域にもアプローチしていくプログラムという意味です。「いい人や立派な人になるためのプログラムではなく、神に導かれるためのプログラム」という言葉の意味の理解が深まった気がします。
霊的ということが自分にとってどんな意味を持っているか
霊的なものに抵抗感があるならば、今自分が持っている神の概念はどんなものかを話し合ってみる。それによって否定したい神の概念がわかるという話がありました。では、否定したい神の概念とはどんなものでしょうか。大体は裁く神、罰を与える神、見捨てる神という否定的な神の概念があるのではないでしょうか。今、否定したい神概念の反対のものを持つことができれば、信じようという意欲が持てるようになります。ビッグブックではおおらかで寛容な神の概念を提示しています。
霊的ということが自分にとってどんな意味を持つのかを自分に問いかける為には、前から持っていた否定的な神の概念を捨てること、神が自分の人生に介入してくることを受け入れること、そしてそれは飲んだくれの人生よりいいものであることを信じることが必要なのではないでしょうか。
次回も引き続き第四章を取り上げます。
参考文献
AA(2003) 『アルコホーリクス・アノニマス』AA日本出版局訳 ,AA日本ゼネラルサービスオフィス
松村明(2019) 『大辞林4.0』三省堂編修所,物書堂