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61. あなたの98%

この間の日曜日。
2週間ぶりに彼と登山へ行ってきた。
連休だったので、観光客を避けて、
いつもとは違うコースを選択。

かなりの急な階段、傾斜のキツい山道。
何度も滑りながら、ぐんぐん登っていった。
額から汗がポタポタ落ちた。
彼は全身びしょ濡れで、石に腰を掛けると
お尻の跡が石にくっきり残って
ふたりでアハハと笑った。

なんて幸せな時間なんだろう。

ふたりで同じ山頂を目指して登っている、と思ったら、感動して震えた。

身体はキツいのに楽しくて楽しくて。
今まで生きてきて良かった、そう思える時間。もう息絶えてもいいくらい。
(いや、よくないw)

半分くらい登ったところで、時計に目をやる。このまま進んで行ったら、下山の時間は…と彼は考えてくれた。

あと少しだけ登って、下山しよう。

ふたりでそう決めて、再び登り始めた時、足元が悪いので、山頂手前で切り上げることにした。

パラパラと小雨が降ってきた。

レインウェア持ってきた?
うん。着る?
ううん、まだ着ない。

そんなやりとりをしながら、少しずつ下りていった。

私は階段を下りるのが苦手。
若い頃に階段から落ちて骨折した時から、普段から手すりを頼りに階段を下りている。
登山の時も階段が怖い。
彼から買ってもらったアルパインポールを両手に握り、恐る恐る階段を下りた。

登山の時、自己と対峙をする時が多い。いろいろ考える。この時間をとても大切にしている。ウォーキングをしている時と同じく。

彼は下山が上手。スイスイとスキーのようにテンポよく階段や山道を下りていく。かっこいいなぁ。上手いなぁ。そんなことも考えて下りていた。

ちょっとした話から、私、急に悲しくなって、立ち止まった。涙が溢れてきた。喋らなくなった。彼が私の異変に気づいてくれた。

どうしたの?泣いてるの?
うん。泣いてるの。
子どもみたいだね。

彼はそう言ってから、私の気持ちを宥めてくれた。

俺の98%は君で占めているんだから、ね。
彼はそう言うと、優しい笑みで私を振り返ってみてくれた。

あなたの98%か。
そうだよね。そうだ、そうだ。

大事な休日も、疲れた平日の夜も、あなたは私と時間を共有してくれる。あなたがずっと大切にしてきた登山という趣味も、私と共有してくれる。

大切にされているんだなぁ。
幸せだ、私。


残りの2%については、聞けなかった。聞くのも野暮だって思ったし。それはきっと、彼が彼自身のために使っている時間。きっとそうだ。そうだと思う。


下山後の温泉、ごはん、アレのアレを目指した日本シリーズ観戦も、宝のような尊い思い出。

帰り道、
ちゅーって言ったら、
彼はちょこっとだけ口を尖らせてFrench kissをしてくれた。

deep kissよりも甘酸っぱい。

あなたの98%は、私の98%でもある。毎日キラキラ輝いているよ、ありがと。

今度、リベンジしようね。


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