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自分で選んで歩いてきた迷路

 悩みを抱えて人生相談に行く時に、相談者が一番言われたくないセリフがある。

「でもそれはあなたが生まれてくる前に自分で決めたことなんですよ」

 今、不幸に腫れ上がった心の痛みを何とかしたいのに、その一言だけで悩み相談を片付けようとするセラピストの何と多いことか。彼等が自己責任論を持ち出してきたら、それは「お手上げ」のサインだ。
 自分で決めてきた? そんなの知ったこっちゃない。生まれてくる前のことなんて覚えていない。自分で人生設計したのかも知れないが、全ての計画を自分で決められるわけでもない。他者の意図を織り込まないといけないことだって勿論ある。大体自分で全てを決めて全てをコントロールできると思うのは思い上がりだ。
 辛い経験をして、そのことに耐えて充分頑張っていて、でも何故自分がこんな理不尽な目に遭わなくてはならないのかわからない、と嘆く人に「でもそれは自分で決めたことでしょう」なんて言ってはいけない。言われて傷つく必要もない。そこを通りたくなくても、そこしか通れなかった道もある。
 こちらの痛みに寄り添う気のないセラピストにはとっとと見切りをつけて、自分の歩いてきた迷路にプライドを持てばいい。

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