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簡単、アリバイトリック(最終)

 

距離的制約でアリバイ成立させる。


 名古屋で殺害されたその時刻、被疑者が大阪にいたなどと距離的な制約があり、殺害出来なかったと誤認させるもの。トラベルミステリーなどで使われるアリバイトリック。物語の舞台を観光地に組みやすく、旅気分を読者に味合わせることが出来るメリットがある。

○乗物による時間トリック(9例)


 自転車が発明されて間もなく、田舎ではまだ知られていない頃、ひそかに自転車を使って、常識では考えられない早さで、犯罪現場と自宅との間を往復して、アリバイを作る話(ボアゴベイ「海底の重罪」、ミルワード・ケネディーの短篇)。旅客飛行機などまだない時分に、汽車の代りに飛行機を利用してアリバイを作った作例もある(ウォーレス長篇)。クロフツは、汽車や自動車の巧みな利用によって、きわどい時間アリバイを作る名手で、彼の作の多くにそれが見られる。一例は「ポンスン事件」。又、スキーを利用したり(クリスティー長篇)、陸を廻れば遠い所を泳いでアリバイを作ったり(クリスティー長篇)、潮流を利用したり(蒼井雄「黒潮殺人事件」、飛鳥高の短篇)、奇抜なのは、モーター・ボートに、一時的にもう一つ別のモーター・プロペラを取りつけて速力を倍加し、時間アリバイを作る着想もある(クロフツ長篇)。
 ――江戸川乱歩、類別トリック集成より。
 乱歩がまとめた以降も乗り物を使ったトリックは量産されていて、ここでは書き切れない。交通機関や時刻表など、時間の経過でトリックが使用不可になるデメリットがある。
 日本の時刻表が正確に運行されているとはいえ、天候や人身事故などのアクシデントがあったら、犯人はどうするのか。実際にはアリバイトリックを運任せにするような実行者はいないだろう。読者としては、あくまでフィクションと割り切って、トラベルミステリーを楽しむのがいいのではないか。

 

○補足 アリバイトリック


 犯行時刻に犯行現場から離れた場所で生じた出来事を犯人が見聞きしたと思わせる場合
 作家大山誠一郎氏の提唱するもので、例えばアリバイがないのに、SNSなどで情報を得て、殺害時に電車の人身事故に巻き込まれていたなどとアリバイを主張する方法。
 実際にその場にいたわけではないので、説得力が足りないのが欠点。それを補う工夫が必要となる。
 このトリックはアリバイを崩す弱点を作りやすいという長所があり、かなり使えるはずだ。

○まとめ


 これでアリバイトリックの解説は終わりです。
 トリック全般に言えますが、既出のものでも、組み合わせ次第で新しいものを生み出せますので、そこが創作のポイントです。
 今ではトリック一つで作品を生み出すのは、無理ということです。

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