賢木③ 群行出発の日
🌷群行出発の日、源氏から斎宮にも文。
みやこすずめが話してくれます。
九月十六日、御出発の当日。
選り抜きの上達部を華やかに供奉させてあるのは、桐壺院のお心遣いだったらしいわ。
野宮からお出ましで、あれこれお忙しい時に、源氏からまた、尽きせぬ思いの丈を綴った手紙が届くの。
御息所にだけでなく、斎宮にも、神前に奉る幣帛の木綿に事寄せて、
💌「畏れ多くも申し上げますが…」
『八洲もる国つ御神も 心あらば 飽かぬ別れの仲を ことわれ』
…鳴神さえも思い合う仲を裂くことはないそうなのに、こうして別れなければならないわけを、国つ神よ、どうぞお聞かせくださいませ
「私は得心がいかないのです」
📖引歌:古今集 詠み人知らず
『天の原 踏みとどろかし鳴る神も 思ふ仲をば 裂くるものかは』
…天空をとどろかす雷神も思い合う二人の仲を引き裂けるものか!
恋人への秘めた恋文ではなく、
旧知の方が斎宮という公式な御立場で退京なさることへの儀礼的な惜別、
ということなのかしらねえ。
母君との関係はみんなが知ってるんでしょうに、それはそれ、ということなのかしらねえ。
天の原まで出て来る大袈裟な嘆きぶりがよくわからないけど、大袈裟すぎる嘆き方で、却って儀礼的な御挨拶だという感じを出してるのかしらねえ。
なんだかよくわからないけど、
女別当(にょべっとう 斎宮寮および斎院司の女官)が代筆したもののようだけど、斎宮の御返事はあったの。
✉『国つ神 空にことわる仲ならば なほざりごとを まづや糾さむ』
…国つ神がお裁きになる仲だというなら、まずは、あなたの誠意のなさを糺されることでしょう。
『💖天空をとどろかす雷神も裂けない恋仲💖なのに』、
なんてふざけたこと🤪を源氏が言って来るのを、姫君がたしなめられたのかしらねえ。
女別当の一存でこんなお返事を書いては、あまりにも出過ぎた無礼という感じがしちゃうものね。
距離感がよくわからないけど、「おふざけもいい加減になさいませ」的な、姫君からのお返しなのかしらねえ。
🌷源氏は欠席
源氏は、斎宮を送り出す儀式を見たいんだけど、
捨てられた男が随行者を見送る図も見苦しかろうと、二条院で所在なく物思いに耽っているの。
でね、斎宮の御返事が大人っぽいのを見ては笑みこぼれているの。
「お歳の割に魅力的な方だ」ってときめいちゃうの。
道ならぬ恋に食指が動いちゃう悪い癖がまた出ちゃったのか、
「お小さい頃にもっとよく見ておけばよかった」「でもまあ、生きていれば何があるかわからない」「そのうち逢えることもあるかもしれない」
なんて思うの。
今、源氏は23歳、御息所は30歳、斎宮は14歳。
今の人は若くなってるとか幼くなってるとかで、根拠わからないし、いつと比べてるのかもわからないけど、年齢七掛け説ってあったわよ。
今の人は幼いからだか、若いからだか、年齢に0.7かけたぐらいで丁度、
昔の人と同じぐらいになるって。
今の50歳は、0.7かけて、昔なら35歳ぐらい、今の10歳は昔なら7歳、みたいなの。
逆に、昔の人の年齢を0.7で割ると、今の人の大体同じ感じの年齢になるって。
昔の人の ”五十の賀” って聞くけど、50を0.7で割って、今なら71歳ぐらいだと思えば、長生きを祝った感じもわかるような、ね。
今は、70歳でも長命感はなくなってるのかもしれないけど。
それで計算してみたら、
源氏23歳、御息所30歳、斎宮は14歳は、
源氏33歳、御息所42歳、斎宮は20歳、ぐらいの感じになるわね。
その計算をした上で、時代も社会も違うというエクスキューズも付けたら、少しはマシになる感じも…
わからないけど、お話が止まっちゃうから、ここは流すわ。
ほんと、いやあねえ。
後で御息所に思いっきり釘刺されるわよ。
ハイセンスということで世に名高い御息所の率いる群行だからね、
(📌あ、群行は、斎宮が威儀を正した御行列で伊勢に下向することね)
式場の大極殿には、見物の車が沢山出ているの。
🌷斎宮の当日の式次第
下向の日、斎宮は大忙しなのよ。
嵯峨野の野宮からお出ましになって、
桂川で御禊の儀式のあと、
松尾大社に布類を奉って、
それから都に入って、大内裏の朝堂院(八省院)にある大極殿に上って、
出御遊ばされた帝に送り出されるの。
眞斗通つぐ美
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