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10 なんちゃって図像学 空蝉の巻



・ 小君を放り出す

🏠 紀伊守邸
小君を愛撫していると、細く小さい体の手触りもそれほど長くない髪もあの女に似ている気がして、今度は心底憎く思えてきます。
苛立ちのままに小君を捨て置いて、夜明けも待たず紀伊守邸を出て行きました。
小君は悲しくてたまりません。

≪稚児草子より≫

・ 文の途絶え

空蝉への源氏からの文はぷつりと絶えました。
このまま忘れられてしまうのだと空蝉の心は乱れます。
それでも夫のある身で人目を忍びながらあの夜の凌辱のような関係を続けられるのはやはり堪え難いのです。

・ 女所帯に侵入

紀伊守が任地に下って女所帯になる隙を捉えて、小君は源氏を自分の車に隠してこっそり連れていきます。

子供の小君の車なので出迎えも出てきません。

 源氏妻戸に待たせて、小君は格子を上げさせます。
西の対の姫が来て空蝉と碁を打っているという女房の声を聞いて、源氏は格子に寄って中を覗きます。
暑い時期なので調度類は畳まれて、灯火が近いので奥まで見通せます。

💎💎💎 

1 空蝉と軒端荻の碁を垣間見る

 に寄りかかっている空蝉は注意深く顔を隠そうとしていますが、小柄で見映えのしない容貌です。

相手の姫は、二藍の小袿をしどけなく掛けてはいますが、白い薄物の単衣襲を紅色の袴の紐結びのところまではだけて乳房も露わな嗜みのない姿ですが、色白でふくよかで大柄で髪もたっぷりして愛嬌のある華やかな美人です。

少し品のない気がして、洗練された挙措の空蝉の方が遥かに好ましいのですが、派手で愛嬌のある美人がくつろいで得意げに笑いはしゃいでいるのを見れば、源氏は新たに捨て置けない興味を抱きます。

≪立派な源氏物語図 空蝉と軒端荻の碁を垣間見る 1≫
≪立派な源氏物語図 空蝉と軒端荻の碁を垣間見る 2≫

🌷🌷🌷『紀伊守邸 空蝉と軒端荻の碁を垣間見る』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼

源氏は身分柄、行儀を保ったよそ行きの女の顔しか見てこなかったので、気を許した女の日常を見るのは初めてで、ずっと眺めていたい楽しさでした。

小君が出てきそうになったので、格子際を退いて、簀子の向こう側まで戻ります。


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2 忍び入る源氏

小君が出て来て「必ず手立ていたします」と言って、また妻戸を叩いて開けさせて母屋に入り、
「開けていれば風が通るからここで寝るよ」と言って横になります。
暫く寝たふりをしてから起き出すと、光を遮るように屏風を広げて影を作ってから、静かに妻戸を開けて源氏を引き入れました。
源氏は人目を気にしながらついて行きます。
敷居のところの几帳の帷子をめくってそっと入ろうとします。

≪立派な源氏物語図 忍び入る源氏≫

🌷🌷🌷『紀伊守邸 忍び入る源氏』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼


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3 逃れる空蝉

西の対の姫は帰らず、そのまま空蝉と一緒に寝ていました。
若い姫はすぐに寝入りますが、源氏を思う煩悶で眠れない空蝉は、焚き染めた高貴な薫香にふと気付き、はっとして反射的に肌着一枚で床を抜け出しました。
長押下に女房が二人ほど寝ています。

≪立派な源氏物語図 逃れる空蝉≫

🌷🌷🌷『紀伊守邸 逃れる空蝉』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼


・ 軒端荻と行きがかり上の交情

源氏は女が一人で寝ていることに安堵しますが、空蝉ではなく昼間見た娘だと気付きます。
失望するものの、昼間見た美人なら悪くもないかとそのまま甘い言葉を囁きながらあだごとに溺れていきます。

💎💎💎

4 小君を起こす源氏

事を終えると部屋に戻り、小君を起こします。
空蝉の脱ぎ捨てていった薄衣を拾い上げ抱えています。

≪立派な源氏物語図 小君を起こす源氏≫

🌷🌷🌷『紀伊守邸 小君を起こす源氏』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼


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5 源氏を脱出させる小君

小君は源氏を妻戸口から脱出させようとしますが、老女房に見つかってしまいます。
夜明けの明るい満月で源氏のを見られてしまい、源氏は渡殿口の柱に隠れますが、老女は近付いてきます。
小君が背の高い女房だと言いくるめている途中、腹痛で老女房は去ります。

≪立派な源氏物語図 源氏を脱出させる小君≫

🌷🌷🌷『紀伊守邸 源氏を脱出させる小君』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼

・ 不機嫌な源氏

🏠 二条院
源氏は不機嫌で、小君の手際をそしります。
想い人の薄衣を抱え入れて床に就きますが、女の移り香の残る衣だけで満ち足りるわけもなく、小君を引き入れて上の空のような愛撫をしながら、「お前は可愛いが、あの人の弟だと思うといつまで可愛がってやれるものかわからない」などと急に脅したりします。

≪稚児草子より≫

小君は辛くてたまりません。

突然硯の用意を命じて、懐紙に『蝉のようにぬけがらを捨てていったあなたが恋しい』と走り書いて小君に文遣いを命じます。


・空蝉と軒端荻の煩悶

🏠 紀伊守邸
空蝉は残した衣が見苦しくなかったかと心が乱れます。

西の対の人、軒端荻には一度も文はありません。
見くびられていることに気付くことさえできない初心な姫の破瓜でした。


💎💎💎

6 徒然に走り書く空蝉

空蝉は、源氏が本気かもしれないと思えてきて、娘時代の我が身であったならと堪え難い気持ちになっています。
源氏からの懐紙の端に『私も密かに泣き濡れています』という古歌を一人徒然に書き散らしてみます。

≪立派な源氏物語図 徒然に走り書く空蝉≫

🌷🌷🌷『紀伊守邸 徒然に走り書く空蝉』の場の 目印 の 札 を並べてみた ▼

※ 信用していない小君の前で空蝉が心を吐露することはないかもしれませんね。童子がいた方が絵が華やかで素敵ですが。

                        眞斗通つぐ美

📌 まとめ

・空蝉と軒端荻の碁を隙見
https://x.com/Tokonatsu54/status/1710987120138223800?s=20
・忍び入る源氏
https://x.com/Tokonatsu54/status/1710988190419665084?s=20
・逃れる空蝉
https://x.com/Tokonatsu54/status/1710989345870794874?s=20
・小君を起こす源氏
https://x.com/Tokonatsu54/status/1710990347856453939?s=20
・脱出させる小君
https://x.com/Tokonatsu54/status/1710991917482422509?s=20
・徒然に走り書く女
https://x.com/Tokonatsu54/status/1710993167628251412?s=20

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