今日投稿すれば236日連続!圧巻!とのこと
『読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?』とのこと。
どうしよう?
感想を書くつもりの本があるのだが、悩んでいる。感想は書く。しかし、それが今夜なのかというと、またの機会にしたい気がするのだ。
なぜかというと、面倒臭いからである。眠い。
だが、ここで取り組まないと未来永劫やらない気がする。
変なことを書いたとしても、それは今夜の感想であり、眠くないときは別の印象を受けるかもしれないので、一つの実験としての価値もあると考え、何か適当なことを書いてみる。後になって訂正したり、まったく逆のことを書いたとしても、それはそれ、味わいというものだ(苦笑い)。
読書感想文の素材はジャック・ヴァンス『宇宙探偵マグナス・リドルフ』(浅倉久志・酒井昭伸/訳、国書刊行会)だ。主人公のマグナス・リドルフは様々な揉め事を処理する宇宙探偵あるいはトラブルシューターと呼ばれる職種の人間にして個人投資家であり、投資に失敗しては宇宙に発生する多種多様な問題を解決し資金を取り戻すことを繰り返している。天才なのに毎回毎回どうして金をスッてしまうのか? 南海泡沫事件で大損こいたアイザック・ニュートンのパロディなのか! と考えてしまう。
訳者あとがきにあるよう本短編集には――書き忘れていたけど同じ主人公の連作短編集です――”ミステリのパロディ”的要素が濃厚だ。ヒロイック・ファンタジーのパロディが切れ者キューゲルシリーズの主役キューゲルであったように、マグナス・リドルフは探偵たちのパロディなのだろう。しかも正統派ミステリに登場する探偵たちのパロディだ。ダシール・ハメットその他のハードボイルド型探偵ではないので、暴力性は皆無である。上品な白いあごひげを蓄えた温厚な老紳士それがマグナス・リドルフなのだ。ただし、ヴァンスの描くヒーローなので内面は黒いユーモアで充満している。これが私の好みに合致するけれど、合わない人には合わない気がする。ちなみに、キューゲルよりは若干まとも。程度の差だが。誤差の範囲とか、そういったレベルの違いか。人間関係で苦悩する人は何かの間違いで参考になるかも。こういう人でなしでも偉そうにしているのだから、真っ当なことをしている自分がくよくよ考え込んでしまうのはおかしい! と思ってもらえるようにヴァンスはキャラクター設定をしたのだと思う(←そんなわけないだろ)。
個々の話について書こうかと思ったが、眠気が危険水位に達しつつある。各タイトルを並べるだけにする。どうかご容赦のほどを。
・ココドの戦士
・禁断のマッキンチ
・蛩鬼(キョウキ)乱舞
・盗人(ぬすびと)の王
・馨(かぐわ)しき保養地(スパ)
・とどめの一撃(クー・ド・グラース)
・ユダのサーディン
・暗黒神降臨
・呪われた鉱脈
・数字を少々
題名を並べるだけにするつもりだったけど、一行感想を。
・ココドの戦士
ヴァンスの別作品『竜を駆る種族』と同じテイストがある。あれの肝は竜だが、こちらはココドの戦士たちが竜に相当するのだろう。
・禁断のマッキンチ
気になることが一つあった。異形の異星人たちが事件の容疑者となるのだが、その中に人間の黒人種がいた。それに意味があるのだろうか、と考えてしまった。容疑者が白人種ではないことに、何かのメッセージ性が含まれているのだろうか、と。恐らくメッセージ性はない。だが、当時の――発表年は一九四八年十一月――白人男性が黒人に対し抱く一般的な差別意識があるのかもしれない、とは思った。ジェイムズ・エルロイ<暗黒のLA四部作>を読み返したくなる衝動に駆られる。
・蛩鬼(キョウキ)乱舞
暴力性は皆無のはずなマグナス・リドルフの蛮勇ぶりを楽しめる一作。金を稼がないと破産するわけで恐るべき蛩鬼の群れと対決するしかないのだが、それにしたって怖い(笑い)。
・盗人(ぬすびと)の王
三文オペラのパロディかも、と思った。ヴァンスは、こういった価値観の逆転した世界を描くのを得意とする。『大いなる惑星』に出てきたカーステンデールを生み出した考え方と一脈通ずるものだある。着想の源は『王子と乞食』かもしれない。
・馨(かぐわ)しき保養地(スパ)
酷い目に遭うマグナス・リドルフが最大の見ものとは思うものの、本作のヒロイン(なのか)メイラの可愛らしさは書かずにおれない。
↓(194ページ)
ジョーは立ちあがり、室内をいったりきたりしはじめた。メイラはそのようすを、自慢の所有物を愛でる目でほれぼれと見つめた。男が五十人いれば四十九人まで意のままにあやつれるメイラだが、そのメイラの好みからすると、今まで見てきたなかで、ジョーはもっともキュートな男なのである。
↑
ちなみにジョーは『肉ばかりで骨があるとはとても思えない手を動かし、ピンク色のあごをなでる』男だ。
・とどめの一撃(クー・ド・グラース)
スタートレックにありそうな感じの話。あるいはアシモフの短編とかに。そう思ったらアシモフ編『SF九つの犯罪』(新潮文庫)に収録されていた。
・ユダのサーディン
もしかするとマグナス・リドルフは人類にとってユダに相当する存在なのかもしれない、と思った。それにしても訳者あとがきに、半田溶助の名前が出てきたのには驚かされると共に、笑わせていただいた。
・暗黒神降臨
魅力的な天体の説明がヴァンスにしては詳細で珍しいなあ、とは思った。それにしても原因となった物質を処理する方法がダイナミックで笑った。
・呪われた鉱脈
これはSFホラーだ。誰の作品に似ているかと問われたら出てこないけれどSFホラーのアンソロジーには、こういうネタの話が一つくらいは収録される気がする。
・数字を少々
ヴァンスはギャンブルのネタも好きだ。彼に日本の漫画を勧めるとしたら福本伸行『カイジ』シリーズだろう。波長は合うと思う。
最後に<訳者あとがき>に触れて終わる。これも面白い。さっき思い出せなかったことが書いていた。『呪われた鉱脈』は『トワイライト・ゾーン』のエピソードとして通用しそう、とあった。ヴァンスはエラリー・クイーンのゴーストライターの一人を務めていたことがあるそうだ。どの作品なの?
やはり面白い。眠気が吹き飛ぶ……いや、やはり眠い。寝る。
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