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[創作]ああ、桜

時としていつの日か僕が、ただ人から愛されたかったという事実に気がつく時、それまでの過酷をボロボロにまでなって生き抜いてきた自分と、それを見届けたいつかの紅葉を思い出して郷愁する時、その愛はあなたという彼女の情緒のもとに、万年の永遠であってくれ。

万年も無限、永遠も無窮だ。
時として春が来る。

彼女が話す。

「あなたはどうして生まれてきたの」

僕は答える。

「きっと季節の気まぐれだよ」

人としての過酷な20代を暮らした2人は、ここに確かめる。

「生まれてきてくれてありがとう」

「こちらこそ」

瞬時もう一度、"僕"が喋る。


「そうだそいえばまだ記念日をお祝いしていなかったね。」

「覚えてくれていたの、嬉しい。何もいらないよ。」

「いやいや、君にプレゼントをしたいんだ。ただでさえ花なのだから、それを花束で飾らないと。」

「泣きそう。こんな1人でいいのかな。」

「1人でいいんだ。1人でただ繊細に愛を確かめよう。」

2人はひそかに、まるで芸術発表会の時の待機部屋での暗がりに身を浸す時のように、韜晦する。

「あなたが素敵なのは、いつも笑っていること。それはきっとあなたが本気になったから。そして苦しんだから。本気になって挫折して、苦しまなければ、あなたのようなくしゃりとした笑顔はできない。」

「なんだか恥ずかしいな。でも当たっているよ、耐え続けた20年だ。」

朝、いつも眠たい頭を起こす時、その過去の夢から子ども時代に潜った後の余韻に、いつかの恋の予感が紛れていたことを思い出したからこそ2人の魂は救われた。

「こんどは僕から話そう。例えば僕たちがこうやって話すとき、それを小耳に挟む側の席に座る人たちが、ちょっといたたまれなくなるとき、君はそれを察知してすこし言葉を優しくして、それでも僕への真っ直ぐな気持ちを話してくれる時、僕はここにいてよかったと思うよ。」

「自意識過剰、私を動かすのはそれだから。でも、それがあったからこそ、私は私でいられる。それに言葉数少なくあなたへの愛を伝えるのは、とても難しいが故に気の弾むことなの。」

きっともう誰も追いつかないこの2人の街には、あたたかなそれでいて静かな風が吹いた。

「君がいなくなったら、きっと人は救われるだろう。」

"僕"がそれを言った後、また近くのお客さんたちを、その心象を捉えた彼女は静かに言った。

「あなたが愛してくれたから。だから私がいなくなったらあなたはそれを文章にする。」

彼女は笑顔で言った。

「もういつになっても死ねますね。」

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