[創作]経営の要 人徳の心得
私なりに考えてみまするに、若い君たちに伝えたいことは概ね一つであります。
"談笑(だんしょう)"ということを、君たちに理解してもらいたい。
そして思うに、談笑というのは一つの苦しみを抜け出したところから起きる朗らかさ、明るさ、愛であります。
つまり苦しんだものほど、優しい笑顔をするということですな。
そして君たちはまだ若い、これから幾重の人と話をし、語り合い、共に辛酸を舐めることになろうかと思いますが、その時にこの談笑というものを一つ胸に留めておいてもらいたい。
朗らかに語り合うというのは、人間の基本ではありますが、案外、これができる人は少ないんです。
で、どうして少ないかと私なりに考えてみまするに、若い人ほど欠落(けつらく)してるんですな。
欠落(けつらく)と申しますのは足りない、ということですな。あるいは言い換えれば、これは逆説的になるが、勢いがある、と言っていいと思う。
この勢いがあるうちはとてもいいんだが、これが晩年になってくるとそうそう通用しなくなってくる。
というのも人生勢いだけで生き抜けるほど単純なものでございませんから、はたと自分の軽薄さに行き詰まるのであります。
そしてこれこそが苦しむこと、に他ならない。
つまりは悩め、ということであります。
そして悩みを悩み抜いて、あとは笑え、ということであります。
そうすることによってはじめて、談笑(だんしょう)というものが生きてくる。
だから私はそれを声を大にしてですね、君たちに熱烈に、呼びかけるのであります。
談笑、
君たちが愉快な人生を切り拓くことを期待しています。
参考:松下幸之助 経営講和
松下幸之助著 「道をひらく」
「素直な心になるために」
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