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[創作]誰よりも優しいあの人は
世界でも高く支持された一流の人間が亡くなった。
生前、その人物は滅多に怒ることはなかった。
「歴史の史実と比較しても、この人は現代的なところで聖人と言われるに値する人間であろう」とまで評価された人物は、90歳を超え100歳近くで亡くなった。
その人物は出会った人の素質を生かし、つねに世の中に価値を創造し、そして怒らなかった。
数々の賞を受賞し、それでも一つも驕った様子を見せないその様は、この人物には心が無いのではないか、という疑惑が出るほどだった。
そして彼が亡くなって、数ヶ月が経った頃、彼の書斎から、生前書かれていた日記が見つかった。
人々は歓喜した。なぜならあれほどの伝説を残した人物が普段何を考え、はたまたどんなプライベートを送ったかを知ることは、彼らの生きがいの上でこの上ないヒントに思われたからだ。
しかし、その日記を開いて人々は愕然とした。
そこには「死ね‼︎」「殺すぞ」「くたばれ糞野郎‼︎」など、幾多の暴言が書き散らされていたからだ。
しかもそれ以外に、何か人の生きがいのヒントになるような言葉は記されていなかった。
人々は愕然とし、困惑した。
これが、あの人のメモなのか...?現代の聖人とまで謳われた、あのいつどんな時も気さくに笑顔で話しかけてくれた人物の?伝説とまでなった、どの生活をとっても人々の幸福だけを考えていった人物の...?
世界は驚き、ひどく落胆した。
比較競争社会の第一位の人間の遺産は、ただただ罵詈雑言だけであったのだ。
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