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[創作]頭が悪いカップルの会話

「でもそれじゃあ、あなたの夢が叶えられないよ。。」

「もういいよ、もういいんだ。僕たちはもうこの世界には用はないよ。それにこの世界は誰一人として世界の起源なんて理解してやいないさ。」

「ごめんね..。ありがとう。せめて私たちはこの世界に仇をなす事だけはやめようね。」

「うん、そうしよう。それに僕も君も洒脱したしね。世界は祝福、僕たちはいつでもゆっくりと幕を引けばいい。」

「この後の世界はどうなるんだろうね。」

「きっと同じことを繰り返すと思う。でも、僕たちのような人も一定数出てくると思う。」

「どうして彼らはそれに気づくことができたんだろう。」

「おそらくだけど、恥だね。彼らは恥を感じていた。彼らは恥を感じて苦悶をした。そしてたぶんそこから一つも逃げなかった。それだけだ。」

「強いね。」

「ああ、人間の懐は深いさ。人間世界娑婆だから、彼らはより光輝くだろう。」

「あなたも綺麗よ。」

「それは君のおかげだよ。」

「私たちははこれから夢を創りましょう。愛するアーティストが空に種をまくと言ったように、私たちもこの世界に花をかざりましょう。」

「君は勇敢だね。きっと僕たちのことは後の後輩が意思を継いでくれるだろう。それまでは我慢を強いるけれど、申し訳ないが耐えてほしい。」

「目的があるだけで耐えるのは容易いわ。それに私、耐えるのは慣れてるの。」

「僕もさ。なんなら耐えることしか僕たちはしてないからね。」

「後輩の子も美しい四季に心を溶かすことを望むわ。」

「そうだね。彼らは僕たちより鮮やかだろう。より透明になった世界で、太い木の根をはるのだから。」

「嬉しい。とても嬉しい。」

「しつこいけれど、君はやっぱり可愛いよ。」

「それは私に、帰る家があるからよ。」

世界はより喧騒に揉まれ、幻想を生み出していくだろう。目的を理解しない中途の社会は、真っ当な感受を持つ人をマイノリティにするだろう。人は人の欠点をあげつらい、人は人を服従し、しまいの果てに誰もがそこを離れようとも、その空虚な無理解の顛倒の最果てに、後悔して死ぬだろう。満足して死ぬ人は常に満足して死ぬ人と共にあった。しかし後悔して死ぬ人は誰一人として後悔して死ぬ人と一緒ではなかった。たといどれだけの先人が声を大きく叫ぼうとも、彼らは話を聞かず、耳を傾けず、己は幸福だと口に泡を吹いて濁った笑みを浮かべ抜いた。恥を避け恥にまみれ、最果てに死から逃避し死から逃れられなかった。マイノリティの人たちはそこを果敢に進んだのだ。上にいる人は気をつけよ、社会適合の者は気をつけよ、この者はいつも自分の心から派生しない共通解でもってこの世を錯乱に至らしめてきたのだ。愉快に死ねる鮮やかな情操を持つ者たちに、この頭の悪いカップルは焚べられた長い歴史の遺産に、継ぎ火をして来世へ還ったのだった。

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