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検事、早朝から仕事、するように家事したら家族から感謝されて家計も潤った(その5)

スーパーの3階から外に出て、外付けのエスカレータで3階から2階へ、2階から1階へと降ります。
歩道を歩いて駐輪場に戻り、自転車のハンドル左右に一つずつバッグを引っ掛け(トイレットペーパーを買ったときはそれも片側に掛け)、自転車のワイヤー錠を解き、ヘルメットをかぶり、ワイヤーをまとめて自転車に結び付け、自転車を押して駐輪場を出て、車道に出てから自転車にまたがってこぎ出します。
たくさん買ったときは、背中もハンドルも重いので少しフラつきます。
だから自転車の速度は普段より控えめです。
行きは長い下り坂があるので帰りは長い上り坂。
ハンドルの両側にバッグをぶら下げながらリュックを背負って坂を登る私のような風体の自転車運転者を見掛けたことは一度もありません。
見掛けたい。
もし出会えたら「あなたも、なのね…」と、親近感やら一体感やらがわくだろうに。
思い返してみると、スーパーでも、私のように、男女問わず、独りで、3人以上の家族の1週間分の食材や日用品を買っているらしき人に巡り合うことはありません。
日曜日の朝という条件下ではありますが、独りで買い物している男性を見掛けることはあっても、単身生活を想像させる人たちばかりです。
その根拠は、買い物カゴが1つで、入っている商品が少ない上、それが酒類だったり、惣菜だったり、納豆だったりするからです。
また、同じく日曜日の朝しか知らない私が見る限り、独りで買い物をしている女性は、高齢者が多く、二人以下の世帯を想像させます。
男女二人で、あるいはそこに子どもが加わって買い物をしているのを見ると、ようやく三人以上の世帯を想像することができます。
そのほとんどの場合、女性が商品を選んで買い物カゴに入れるか、女性が選んだ商品を女性の指示に従って男性がカゴに入れています。
カートを押しているのは男性や子どもであることが多い。
カートを押すだけ、あるいは商品を手に取ってカゴに入れるだけでも、カートと共に移動する家族の一体感がそこにはあります。
また、「◯◯がなくなりそうだよね?」「これ食べたい」「これにしよう」などと女性の選択に意見する男性も、時々見掛けます。
他方で、ただ帯同するだけで、カードも押さず、手も口も動かさない男性がいます。
スーパーでの買い物に帯同する多くの男性にとっては、パートナーやお子たち家族を乗せた自動車を運転してスーパーに運び、精算を終えた商品を袋に詰めて自動車に運び込み、家族と商品を乗せた自動車を運転して自宅に運ぶのが課された重要な役目であろうことは容易に想像できます。
実際スーパーの周辺でいわゆる路駐する自家用車の運転席に座り、スマホをいじって時間を潰し、徹底的に運転手を全うする男性にお目に掛かることもあります。
このように、どのようなかたちであれ、日曜日の朝のスーパーにおける二人以上による買い物には、かつてのお茶の間に代わる一家団欒としての、家族の憩いの時間・空間としての意義があり、その家族にとっては貴重な、かけがえのない大切な時間が流れているのかもしれません。
しかし、私の買い物には、そのようなものは一切ない。
私も求めてはいない。
たぶん家族も。
あるのは徹頭徹尾、経済的合理性のみです。
まず、自宅とスーパーを往復するには自動車ではなく自転車で十分という前提が必要ですが、自転車による往復で消耗するのは、私の時間と体力と若干の思考力のみ。
私の場合、妻より私のほうが明らかに時間も体力もある。
その妻の時間と体力、そして思考力は温存され、ほかのより価値の高い(たとえばお金を産み出す)ことに振り向けられる。
これは非常に重要なことです。
誤解しないでください。
一家団欒の買い物を否定するのでも、価値が乏しいと主張するのでもありません。
飽くまで買い物という作業、家事に、経済的合理性のみを求めるなら、家族のなかでとりわけ時間と体力のある人間が、単独で買い物をするのがベストではないかしら、ということです。
そして、私にとって買い物は、一家団欒、家族の絆を強め、その和を育む大切な時間としての意義は必要ない、それは別の機会に、というだけであります。
むしろ経済的合理性の方が、私の心が強く求めるものであり、日曜朝の買い物を持続可能なものとするための原動力として、非常に重要なのです。

さて、往路よりも少し時間をかけて自宅駐輪場にたどり着くと、ハンドルに掛けたバッグを下ろし、所定の位置に自転車を止め、ヘルメットを外してハンドルに掛けます。
それから自宅に戻り、キッチンで両手それぞれに持ったバッグを置き、リュックを下ろします。
保冷バッグに入れた冷凍・冷蔵品から冷蔵庫の冷凍室・冷蔵室に順次入れます。
それからもう一つのバッグとリュックから野菜・果物類を取り出し、重く大きなものから順次野菜室に入れます。
最後にリュックの底のほうに入れたガラスやポリエチレン製のボトルに入った液体、缶詰、味噌、調味料、その他日用品を取り出し、所定の位置に収納します。
これで日曜日朝の家事ルーティンがひと段落します。


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