日記に短し遺書には長し

リハビリをしなければならない。

別に急いで何かができるようになる必要はないのだけれど。幸い麻痺があるのは左半身だけだし今は実家だし仕事もないから時間だけはあるし





仕事を失ったんだった。



不摂生が祟って道端に倒れたのは2021年の夏。仕事からの帰宅途中に立ち寄ったコンビニを出発しようと自転車に跨りかけて転び、何かがおかしいと思いながらえっちらおっちら帰宅したものの、どうにも足元がおぼつかない。息苦しさを感じて外の風を吸いに出たところでいよいよ倒れ込んで体も動かなくなった。


あ、死ぬんだ


あっけないもんだな


でも、いいかな


この先いいこともないだろうし


もういいや これでおしまい


死ぬんだ…死ぬんだ…死





あれ、死なねえな




死ぬんじゃねえのかな



えー…死ぬことを受け入れたとはいえ自殺したい!ってわけではないし、助かるもんなら助かったほうがいいんだけどあ、誰か来た

『あれ…倒れてるのかな…あ、あの…大丈夫ですか?』

ああよかったこのまま道端で野垂れ死にかと思った助かっ「ダ…ダイジョブデス」


あれ?何を言っているんだ私は?倒れてるんだよ?救急車呼んでもらおうよ。

『いや、まいったな…酔っぱらって倒れたのかな…救急車呼びましょうか?』

ほら、心配してくれてるじゃない。呼んでもらおうよ、ね?酔っぱらってるんじゃないですよ身体が動かないんです救急車呼んでくださ「ダ…イジョブ…デス」




参った。

無能で従順な社畜根性ここに極まれり、だ。どうやら「ダイジョブ」以外の言葉すら発せなくなったらしい。声を掛けてくれた男性は困り顔をしながらどこかへ行ってしまった。


いよいよおしまいだ。もう駄目だ。恥の多い生涯を送ってきましたみなさんさようなら元気でお過ごしください良いお年を…なんか来た。


『もしもし、大丈夫ですか?警察です。酔っぱらってるんですか?酔っぱらって寝てるんですか?』

「…ダイ…ジョブ」

『えー、なにか身分証はありますか?』

「ア…アイ」


そう言えばポケットにはカード入れがあって、運転免許証や銀行のカードなどが入っていたはず。

『持ってないようですね…』


後になって思えば、だが、麻痺が進行してその時の私はろくに手も動いていなかったのだろうが感覚としては必死に免許証を見せようとしていたのだと思う。

『救急車を呼びますよ?一度医者に診てもらって、それから後のことを考えましょう』


酔っぱらってないの。今日はまだ酒のんでないんだけど、もう返答する力がない。空は少し白みはじめる気配を出している。もう何時間も倒れていたのだろう。道路脇に掲げられた、いかにも昭和な古ぼけた看板の〈今日も元気だ たばこがうまい〉と言う標語が今際の際にしてはすっとぼけている。


程なくサイレンが鳴り響き、薄れゆく記憶のなかで私はぼんやりと病院に運び込まれた事を感じ、なんとなく処置室っぽい場所で何人かの人に何かを確認されて、そのうちの一人に脳出血だと告げられた。私は、やっぱり死ぬんじゃん…と思いながら気を失った。



それから半月ほどの意識はあまりなかった。どうやら東京オリンピックが始まったようだという映像と、なんだかコミュニティFMらしき音がするな、という記憶だけが容量も僅かであろう私の頭の中に転がっていた。



で、何の話だっけ




あ、そうそう、そんな感じで左半身が麻痺している状況では働くのが難しいということで、半年の入院と退院後1年ほどの休職を以て無職になる。ゆえに時間だけはある→リハビリをしなければならない、のだった。


…で、私は今なぜnoteをポチポチ打ってるのだろう。


人は忘れる生き物だ。それは確かなことだし、それでいいと思う。誰だってそうだ。


でも忘れるって怖い。仕事をしていたときの同僚と、いつ何処に食事に行ってどんな会話をしてその内容のどんなところに笑って彼の奥さんがどんな人で、まで思い出して彼の名字が思い出せないゾッとする感じ。ゲロ吐くほど笑いあった仲間のアイツ…だ、誰だっけ……ぁあああぁぁ



なので、人生の備忘録をつけよう。


私は一度死にかけた。もういつ死んだっておかしくはない。だけど、私には残るものがなにもない。名字なんか真っ先に忘れられるだろう。


それでもいいのだけれど、私はかまちょなので出来れば思い出してほしいし、生きている限りはただの思い出だとしても憶えておきたい。


なので、備忘録をつける。日記というほど日々綴ることはないし、遺書というほど覚悟の決まったメッセージがあるわけでもない。いつもこんな長文もかけないし、ポエムしたためてウットリするガラでもない。


ただ、誰かに自分のエピソードを話す時、つっかえてしまったり思い出せなくて言い淀んでしまうのは勿体ない。楽しくお話する人生のお助けツールが欲しい。私はnoteをよく理解していないが、取り敢えずそういう覚え書きツールとして利用してみようと思う。


なので一先ず他の誰が読まなくても自分が読むに耐えられればいいと思う(うそですできれば皆さんにもチラ見程度でも読んでほしいですよろしくおねがいします)


最後に、どうせ長続きしないと思われているだろうし自分でも思っているので、毎回「次の目標」を決めようと思う。どんなに低い目標でもいい。継続することに意味があるからね。

次の目標

今月中にもう一つ記事をあげる

低い。

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