装甲騎兵ボトムズ赫奕たる異端とは何か

前の記事から来てくれた皆様はおはこんばんにちは
初めましての方は初めまして
八々斜目と申します
今回はテレビ版ボトムズの放映から十年ほど経った1994年に販売されたキリコ達のその後を描いたOVAにして大問題作
装甲騎兵ボトムズ赫奕(かくやく)たる異端について語らせてもらう
例の如く今回もネタバレ全開なので未見の諸氏は注意してくだされ

シリーズ初のテレビ版のその後に踏み込んだOVA

本作は今までのOVAで描かれてきたキリコの過去やテレビ本編の行間ではなく、意図的に踏み込まれてこなかったキリコの未来について切り込んだ内容であり、最終回から32年後に目覚めさせられたキリコが未だ眠り続けたまま連れ攫われたフィアナを巡ってアストラギウス銀河の最大宗教結社マーティアルに対してカチコミをかけるといった内容となっている
そのため、当時のボトムズシリーズからしてみれば前代未聞の内容であり、そのラストの展開も相まって野望のルーツよりも大きな賛否の声が上がる一作である

初めて表舞台に出た銀河宗教マーティアル

この作品でポッと出て来たように感じられるマーティアルだが、一応テレビ版の時点で存在自体は示唆されており、ウド編から登場するボローはPS研究に取り付かれ、破門されたマーティアル教の司祭と言う設定である
またマーティアルにはギルガメス、バララント双方合わせて大量の会員がおり、戦争にすら影響を与えられるほどの権威を持つ
だがマーティアルの教えは武の研鑽と闘争による進化、故に戦争に介入することはない
だからこそテレビ版では表に出てこなかった
だが本作では100年戦争終結以上の異常事態が起きたために彼らは動いた
マーティアル教の教えに背く「触れ得ざる者」が目覚めたからである

触れ得ざる者

ここまでボトムズをみてきた諸氏なら言わずもがな誰のことかわかるであろう
そう、我らが主人公にして神殺しの異能生存体キリコキュービィである
ワイズマンを殺し、どの勢力にも属さず無頼にその力を振るう様はマーティアル教の教えに背くモノであり、彼とフィアナが冷凍睡眠され、宇宙に放逐されてからはマーティアルでは彼を触れ得ざる者として認定し、彼が眠り続ける限り、徹底した不干渉を決めた
だが彼は目覚めた
だからこそ触れねばならないのだ、痛みを伴うとしても

寒い棺桶

テレビ本編の最終話で再開された戦争は本編から32年が経った作中時点でも続いており、第四次銀河大戦と呼ばれていた
その中で第三次大戦の頃よりも戦争は激化した故に急速に普及した技術があった
ソレは本編最終回でキリコ達が入ったモノとほぼ同じ棺桶のようなコールドスリープ装置、通称コールドカプセルである
前線の負傷兵をこれで凍結し、安全な後方で解凍して治療することで生還率を上げる…はずであったが、実質的には埋葬を簡略化したような形となり、輸送船が襲われて宇宙に放り出されれば二度と目覚められないこともあるため、兵士たちは皮肉を込めてこれを「寒い棺桶」と呼んだ
そしてそんなコールドカプセルの急速な普及は様々な宙域に漂うコールドカプセルを回収し蘇生させることを生業とする民間蘇生業者を急速に増やした
ソレが目覚めを望みも望まれもしなかった2人を地獄に引き戻すとは誰も知らないままに

PS研究の結晶ネクスタント

本作ではPS研究の結晶として全身を機械化し、補助脳を装着した次世代型強化人間のネクスタントのティタニアが登場しており、技術体系としてはバララント系の機械化技術とギルガメス系の脳神経系技術の融合が図られているため、全身を機械化し、胸部中央に補助脳と言われる専用の演算装置を取り付けることで成立している
ギルガメスPSのようにヂヂリウムを定期的に浴びる必要はないものの、バララントPS以上に全身を機械に置換しているため定期的な人工血液の交換と専用の機材による調整が必須となっている
その性能は凄まじく、キリコの乗るATですらネクスタント相手には苦戦は免れないほどである
また、ボトムズ本編の時間軸から約300年後の第五次銀河大戦の頃を舞台にした「equalガネシス」と言う小説ではATが廃れ、ネクスタントの素体に人間の脳では無くAIコンピュータを搭載したロボトライブという人型兵器が活躍することになるのであるが…ソレはまた別の話である

ストーリーのあらすじ

ボトムズ本編から32年が経った後のアストラギウス銀河では未だにギルガメスとバララントの両陣営が砲火を交えており、その中で急速に普及したコールドカプセルの存在は、様々な宙域にばらまかれたカプセルを回収し、中で仮死状態にされた兵士を蘇生させることを生業とする民間蘇生業者の存在も増やしていた
そして今日も民間蘇生業者の宇宙船がカプセルを回収していく中、我々がよく知る一つのカプセルがソレに回収されたところから物語は始まった

そしてそのカプセルは民間蘇生業者達によって築かれた違法建築の塊としか呼べないバベルの塔、惑星マナウラの衛星軌道上に浮かぶ工場群コンプラントへと運び込まれ、蘇生処置が行われた
蘇生されたキリコはすぐに意識が戻ったが、フィアナは蘇生不良状態であり、目覚めない
そんな中、フィアナはどこかへ運ばれようとしていた
ソレを阻止しようとキリコは動くも、触れ得ざる者キリコの目覚めを知ったマーティアルはコンプラントにネクスタントのティタニアを送り込み抹殺を図る
キリコは蘇生したばかりで思うように動かない身体を引きずりながら応戦するもネクスタントの性能の前に苦戦を強いられていた
そんな中、2人の戦闘の余波でコンプラントは崩壊を始め、ソレに乗じてフィアナを乗せた宇宙船はどこかに飛び去ってしまう
崩壊を始めたコンプラントの中でキリコはどう生き延びるのか、そしてフィアナはどこへ…
戦いの行方や如何に…

後書きとか色々

本作はキリコ達のその後を描くOVAであるが、ファン達の声に応えて時計の針を進めた代償は大きかった
未見の諸氏は覚悟を持って視聴することをオススメしよう
では、その代償の行方を見届けてくれ

最後に第一話の予告を置いて〆としよう

眠りは質量のない砂糖菓子

脆くも崩れて再びの地獄

懐かしやこの匂い、この痛み、我はまた生きてあり

炎に焼かれ、煙にむせて、鉄の軋みに身を任せ

ここで生きるがさだめであれば、せめて望みはギラつく孤独

装甲騎兵ボトムズ赫奕たる異端 第一話「回帰」

鉄の棺の蓋が開く

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