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1.孤高の男とインディアン

おいおい…………
話がまるでわからね~って……
NEW MEXICO州のLAS CRUCES⁇

日本を飛び出してきて・・・

最愛の彼女と破局する
一週間前に見た不思議な夢

彼女と古びた列車に乗っていた
その列車が駅に止まった時
彼女は大勢の人に紛れて降りていった
俺は慌てて後を追った
だけど彼女を見失っちまった……

いま思えばある種のサインだったのだろう
その悪夢を見てから一週間後……

破局

それ以来
俺は思い切り情緒不安定なんだよ
心が全く定まらねぇ

でもな・・・
心のある一点だけは
ブレていなかったんだ
そいつが俺に言うんだよ

「行けよ
 おまえ、行きたいんだろ?」

ここに来ることは
俺のおふくろさんだけに伝えて
国際免許とパスポート、
数枚の着替えに
クレジットカード数枚持って
飛び出してきちまったんだ
突発的に、な・・・
飛行機のチケットは
何とか手に入れられた

で、数日前に
LAS VEGASでBIKEを手に入れてさ・・
93号線、40号線、17号線と走ってきたんだ
ARIZONAの風が余りにも気持ちよくて
気の向くままに相棒を走らせていたら
NEW MEXICOだった・・・ってわけ

真っ青な空

ほぼ同時期に
最愛の彼女も仕事も失っちまった俺
同棲していたアパートも引き払った

フラれてからというもの
もうずっと
心ここにあらず、でさ
生きてるんだか
死んでるんだか・・・

俺は彼女とよく遊びに行っていた場所
気が付くと
そんな場所ふらふらしてるんだよ
無意識に彼女追っちまってた
彼女と似た後ろ姿見かけるとドキッとする
駆け寄って行って

「今までは
 ちょっとしたドッキリだったんだろ?
 俺が悪かった。
 また一緒になって家庭築こうよ」

いや、
はっきりとした意識はあるよ
でも完全に過去を追っちまっていてさ
完全に
過去の中にしか生きられない俺がいたんだ
失ったもんを追う事しか出来ない俺

そんで夕方になると
記憶無くすまで酒飲んでさ
「辛いもの喰えば元気が出る」
そんな話聞いて
辛いメキシコ料理喰いに行ったり・・・

で、時間見つけると
ふらふらと思い出の場所に行ってさ
もう取り戻すことなど出来ないのに
記憶の中の彼女をひたすら追い続ける俺

心の修復って簡単にはいかないもんだな
なかなか「直」らない
(修理に出せばって訳にはいかね~・・)
思い出ってのは時には重荷になる
こりゃ厄介な代物だぜ
思い出すたびに辛くて辛くて・・・
酔っぱらうたびに泣いていたよ
気が付くと顔がびっしょりなんだ
「え?あれ・・
 なんで顔がびっしょりなんだ?・・」
涙・・
とめどなく流れる涙
俺は
涙が止まらね~んだよ
心が木っ端微塵なんだ・・・
修復できんのかよ、これ・・・
浴びるほど酒飲んでもさ
忘れることができね~
こんな辛いことあるか??
誰か時間巻き戻してくれよ
なぁ・・お願いだよ・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いま俺がいる場所は
NEW MEXICO州

フリーウェイの風が
最高に気持ちがいい
全て洗い流せるような気がする・・・
俺は完全に無となって
心が赴くままに相棒を走らせていた

おい、気持ちいいだろ?
 俺も馬が好きなんだ
 最高だよな」

(え・・・?)

「馬で走る・・・
 ただそれだけなのに
 なぜこんなに気持ちいいのかな
 おまえ、考えたことあるか?」

俺の左横・・・
え・・
馬に乗ったインディアンが並走している⁉⁉
乗り手は
いたずらっぽい満面の笑みを
こちらに向けている

「やっと会えたな
 どうだ、久しぶりの大地は・・
 最高だろ?」

(誰なんだよ・・
 どっかで会ったことある人か?・・・)

「う~ん・・・
 信じないだろうけど
 簡単に言うと
 俺はおまえ、おまえは俺」

(は~?なんじゃそりゃ!!)

・・・そう言えば
初めてNEW MEXICO州に来たというのに
さっきから何故か
ものすご~く懐かしい感覚に襲われている

「ははは(笑)
 理解できるかな?
 う~ん・・・
 こりゃ面白いな
 生まれ変わっても
 好きな物の嗜好は
 引き継がれるんだもんな!」

(引き継がれる⁇)

「革細工、定期的に作ってるか?」

(なんで革細工好きなの知ってんだよ・・💦)

「誰にも教わらないで
 独学でカバンまで作れるようになったろ?」

(なんで独学で勉強したこと知ってんだよ💦)

「俺も大好きだったんだよ
 ビーズやら鹿の骨やらを加工してさ
 革に合わせて色々作るのが好きだったんだ」

(・・・)

「それも見事に引き継がれているんだなっ!!
 ははは(笑)
 彼は俺の願いを
 聞き入れてくれたようだ(笑)」

(彼?・・・いや、ビーズとか骨は
 加工出来ないけど・・😅
 革細工なら大好きで
 鞄やらケースやら色々作るけどね)

「おまえ、むかし後頭部に
 激しい衝撃受けた夢見なかったか?」

(それ、はっきり覚えている・・・)

「それが俺の最後
 白人に後頭部を撃ち貫かれたんだ
 奴らは傍若無人に
 この神聖なる大地を
 荒らしまくっていやがってさ
 我々の我慢も限界にきて
 色々な部族の戦士たちが決起して
 それを阻止しようとしたんだ
 残念なことに
 白人側についた部族もいたがね」

(あの夢は忘れられない
 起きた後もずっとジンジンしていたもんな)

「もう理解できただろ?
 俺はおまえの前世なんだよ!」

(マジか~っ!!!!💦そんなことってある~⁇)

「おまえが感じる喜びや悲しみ
 いつも共有しているんだぞ(笑)
 それから・・・
 おまえはこれから試練を迎えることになる
 この旅を心から楽しめ
 日本に帰ってからが試練の始まり
 俺は結末も知っている」

(ひぇ~💦マジですかぁ・・・(涙)
 結末、教えてくださいよ~💦😢)

「はっはっはっ(笑)
 それは出来ない(笑)
 おまえには崇高な戦士のDNAが
 見事に受け継がれている
 だから安心しろ(笑)
 ぜったいに大丈夫だ」

(え~・・・
 だんな~教えてくださいよ~・・・😢)

「この旅、
 おまえの人生を根底から変える旅なんだよ
 思う存分楽しめ
 後のことは考えなくていい
 とにかく楽しめ
 この先
 色々な人がおまえを
 助けてくれるだろう
 おまえのその素直な心
 笑顔を絶やすな
 帰国したら
 ほどなくして生涯の相棒にも恵まれる
 おまえが望むような馬だ
 ずっとおまえに寄り添ってくれる最高の馬
 沢山の仲間や出会いをもたらしてくれて
 尚且つ
 おまえを生涯にわたり導いてくれる」

 
(す、すごい・・・(涙))

今回の旅の相棒

「俺はいつもお前と共にある
 それを忘れるな」

             続く・・・


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