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実写版『耳をすませば(2022)』感想

実写版『耳をすませば(2022)』

少女時代雫役の安原琉那、演技上手いなー。「天真爛漫ちょいウザ元気っ子×年齢なりに思慮なし思春期ガキ女子」の質感がリアルだった。雫の友達女学生役も「田舎純朴恋愛脳×三つ編みおさげ」がリアルな感じでナイス。

成人後天沢聖司役の松坂桃李は爽やか王子様過ぎて完璧な実写化だと思うのだけど、コテコテすぎてなんだか見てる側が恥ずかしくなりますな。

1987年や1998年の日本の再現度についても中々良かった。「アニメ表現×上澄み40%くらいに抑えた80年代表象≒2022年現在から見た80年代」をうまくハイブリッドしてて良い感じ。

80年代90年代を忠実に再現したら、ファッションとか髪型とか美容レベルとか街並みとか建物の材質、電化製品とか、マジでイモダサくて画面的にツラいんでね…。

両親のユニクロフリースとかタイタニックとかあの時代あるあるな小ネタが懐かしい。市民図書館や食堂のイモさも、現実はもっとイケてなかったりシミったれた小汚さ古臭さがあると思うけど、生活や日常のショボさが出ないよう上手く抑えられてて良い感じ。まじであの時代は庶民用に大量生産されたあらゆるもののデザインが貧弱で途上国って感じだからな…。デザインがインフラとして洗練されるにはデジタルの普及や技術や流通のスピード化→アナログ技術が廃れてく00年代中盤~10年代まで待つ感じなんだよな。

80年代なのに生徒の髪型がみんなキューティクルつやつやだったりストパーありなのは違和感なくはないけど、アニメ寄りなヴィジュアルのファンタジーになってて良い判断だと思う。

90年代00年代の自分探し&失恋海外旅行ってのもベタに時代感押さえててノスタルエモい趣向ですな。ぶっちゃけ二つの時間軸が交錯する必然性とか、二人の10年後をわざわざ描く必要性が良く分からなかったのも事実だけど、あの時代の上澄みイメージとか平成もっさり空気感をヴィジュアライズしてるのは良い感じだと思う。

そして最後、普通にくっつくんかーい!となって笑った。
若い二人にとって10年って気が遠くなるくらい長い時間じゃない?

人生で一番良い時期。ずっと気持ちが変わらずに遠距離恋愛っていうのがあまりにファンタジー過ぎてそこだけは全然共感出来なかったんで、お互い解放されて新しい人生歩んでいくのかと思った。サラの言い分がもっとも過ぎてそっちに共感してしまうのよ(笑)

のでラストはありきたり過ぎて凡作だなと感じた。しかしまあ、ファンからするとこういう予定調和なハッピーエンドの方が嬉しいのかな?

せっかく時間軸(1987→1998)や空間軸(イタリア⇄日本)が変わったんだから、閉じた時空に登場人物を閉じ込めなくても良いんじゃないの?と思ってしまう。

恋愛の美しいところだけを切り取って冷凍保存する、がテーマなのだろうか?

令和の今、あえて『耳をすませば』の実写版をつくる意味としては謎だったかも。昭和平成ノスタルジー?

どの年齢層に向けて作ってたんだろ?
今の10代20代が見るには時代設定が古臭い気もするし、異世界というには身近に過ぎるような?

逆に昭和平成生まれだったらお花畑ファンタジー恋愛ドラマを楽しむにはオジサンオバサン過ぎる気もしないではない。

遠距離恋愛による関係の崩壊を期待したし、くっつく方向性ならば結婚後の生活とすれ違いを描いてくれた方がファンタジーとリアルの両立というようにも思える。

何よりこの二人、10年間の遠距離恋愛の中で相手の厭な部分が見えるくらい時間を共にしたことがないように見える。

長いモラトリアム関係の果てにある「結婚」があまりにロマンチックの結実過ぎて、ハッピーエンド的演出ながらも早々に離婚する未来しか見えないエンディングだった。 

というわけで心の薄汚れたオジサンにはイマイチストーリーは刺さらなかったんだけど、令和から昭和後期〜平成初期を振り返ったハイブリッド美術は良かったと思う。

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