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【連載】 還らざるOB(6)

 当初は年二回のペースで旅行に出かけた。中には軍資金が少なく、贅沢をしようにも出来ない人がいるので、旅行一回当り約三万五千円以内に抑えるように日程を組んだ。しかし、コンパニオンを侍らすと予算オーバーしてしまう。個人的に何人かが寄付をして何とか旅費を賄っていたのであった。
 
 ある年の秋、三菱が住んでいる九州へ行くことが決まった。三菱は元は同じ会社で、彼らと一緒に仕事をしていた仲間である。
 羽田から飛行機で福岡空港へ行き、三菱と合流して、レンタカーで熊本方面を巡った。三菱はみんなと再会して、非常に感激したのであった。
 美味い焼酎一本差し入れしてくれた。
 山の中の秘境温泉に一泊した。
 三菱は、娘が東京の大学に通っていたこともあり、その仲間の旅行に合わせて九州から東京に出てきて旅行に合流したことがあった。それ以来のメンバーとの再会であった。その三菱も話し好きで理論派である。
 宴会が終わって部屋で二次会となり、ひょんな事で議論になり、野森が中に入り、やっと納まったこともあった。自分の考えを曲げない、妥協しない、迎合しない、協調しないのがこのメンバーである。纏まるはずが無い。しかし、皆どこかで通じ合っているのがこの仲間であった。
 
 その後、ある旅行で、羽田が幹事をして仙台の秋保温泉に出かけたことがあった。
 新幹線で東京から仙台へ行き、仙台駅からバスで秋保温泉の有名旅館についた。各自風呂に浸かり、さて夕食となったが、事前に旅行会社を通してお願いしていたコンパニオンが来ない。フロントで確認すると、あの東日本大震災の後で人員不足となり、旅館側で手配を忘れていたとのこと。その結果はもちろん通夜のような食事会となったのである。幹事役の羽田は、せっかくここまで順調にことが運んでいたのに、非常に残念がった。
 二次会は別室でコンパニオンを入れて宴会となったが白けた二次会となった。仙台在住の海名ともう一人の高梨もこの旅行に参加してくれていた。
 帰りは、仙台駅にて時間を作り、浮いたお金で大いに贅沢をしたのであった。
 その旅行から暫くは、東京都内での飲み会でお茶を濁し、旅行は無かった。
 
 秋保温泉旅行から一年ほどが経った時季、野森から東京在住のメンバーにメールがあった。その内容は次回旅行の打合せ会の連絡であった。場所は、錦糸町にある居酒屋であった。


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