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熊雄(連載③)

 熊雄が生まれて一年が経った。
 彼の姿は依然として真っ黒な、しかも太い毛が体中に生えたままであった。毛の長さも一、五センチほどに長くなっていた。

 母親のヨシは息子の将来を心配した。一歳の誕生日の十月、風呂敷に包んだ白米を背負わした。その姿を見て達雄とヨシは、熊が鮭を背負った木彫りと瓜二つだったから、手を叩いて大笑いした。その時、この熊雄が途轍もない能力を持っていることなど想像すらできなかった。

 近くの集落にいる親戚連中は、熊雄が生まれてからは、気味が悪いといってその掘立小屋に近寄ろうとはしなかった。いくら親戚でも世間は冷たいものである。しかし、達雄とヨシは周りから何を言われようが、毅然としていた。(同じ人間の子供なんだ。文句があるか! 人様に迷惑をこれっぽっちもかけていないべさ)
 二人は自分達の目の黒いうちは、どのような非難中傷、罵詈雑言ばりぞうごんも無視しようと話し合った。
 この子を守れるのは自分達しかいないのだと...…。

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