【連載】還らざるOB(5)
五年ほど前、その会社の同じ部署の人間であった者同士がもう一度会って食事でもしようと声掛けをしたのが野森であった。
彼は仕事が忙しく、会社に泊まり込んでの徹夜仕事に身も心もぼろぼろ状態であった。そのとき、ふと思い立ち、連絡を取ってみた。
高円寺の居酒屋に集合したのが、野森と佐枝と新賀と田川と小平の五名であった。早速旅行の話題になった。
その年の秋、野森の自家用車を使って白樺湖に向かったが、田川は車の中でよく喋りまくった。同乗者は閉口し、そのうるささに勘弁してくれと言うばかりであった。
運転は当然のように野森がした。車内やその会社の白樺山荘では話題が尽きなかった。皆楽しい時を過ごした。
その旅行が終わって、野森からまた徴集の連絡が入った。中田と羽田それに横浜の平崎にも声を掛けた。
野森は考えた。この集まりは自由気ままでいいのだ。ただし、誰かが皆のことを思い、気遣うことが出来たらそれでいいと。強制ではない。縛ってしまえば長続きしないことは、年の功で理解していた。
新年会を兼ねてみんなが集まった。新高円寺で久々に盛り上がった。昔のことで花が咲いた。そして今度は皆で何処へ行こうかということになり、大方の意見は伊豆であった。
実施日は四月中旬と決まった。幹事はまたしても野森である。
当日までの段取りで大変なこともあり、旅行中の補佐役に羽田が選ばれた。個人の車三台で行くことにした。
四月中旬春盛りの時季、渋谷の道玄坂に集合して伊豆へ向かった。
その日はほうぼうを観光して、予約を入れていた温泉旅館に到着したのが夕方も六時近かった。
皆は直ぐに露天風呂へ急いだ。男女混浴のこともありカップルが多かった。お風呂に浸かった後は夕食である。皆は高校時代の修学旅行のようにはしゃいだ。全員楽しい顔をしていた。
次の日も伊豆を観光して帰途についた。
羽田が運転する車に田川が同乗して道中喋りっぱなしだったので、手元が狂い危うく崖下に転落しそうになった。
本当によく話す田川であった。
前の晩には、何人かが旅館を抜け出して〇〇〇パブとやらへ行ったらしい。
帰りの車の中でその話題で大盛り上がりとなった。我慢汁がどうのこうのと大笑い。男たるものどうしようもない人種である。
二人を除いて妻帯者であるが、男同士の旅ではそれも忘れるものらしい。
まったくもって単純である。
その旅行から帰ってきて、暫く経った頃、野森から仲間にメールが届いた。
その内容は、反省会であった。
みんなの予定が合う日時が一回でピタッと合致することは稀である。何回かメールでのやり取りがあり、やっと決まるのである。まして携帯のメールアドレスが無い人もいるので、野森はその人に別途連絡するのであった。
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