吉良吉影の真人間の部分

 最近寝る前にストレッチをしている。
 毎日モニターの前に座り込み、たまに指先を動かすだけの日々を送っていたが、ついに腰を痛めた。運動すれば改善されるらしいが、腰を痛めた状態でできる運動などたかが知れている。整体には絶対に行かない。金を払ってまで他人に体を触られたくない。
 今日もこれからやるわけだが、気づいたことがある。吉良吉影もやってたなこれ。
 ジョジョのボスキャラのルーティンを意識せず自分もやっていたと考えると嬉しさもあるが、殺人鬼と同じと考えると忌々しくもある。
とはいえストレッチをやめるとまた痛みが襲ってくるため、ここは吉良吉影への印象を変えることにしよう。
 まず吉良吉影の殺人は己が異常な性癖によるものだが、これについてはある意味吉良吉影も被害者と考えられるかもしれない。
その性癖の目覚めはモナ・リザの手が原因だが、手に限らずモナ・リザにはどことなく妖艶な雰囲気がある。それ以前に性に触れる機会が乏しく、その魅力を感じ取ってしまったとすれば彼が手に興奮するようになったのも理解できる。
 だからと言って殺人が許されるわけではないが、存外この世には性が発端となり起こる事件が多々ある。児童ポルノや監禁・誘拐事件が思い浮かびやすいだろう。その他にも不倫や浮気も性が原因だし、それらが殺人につながることも珍しくない。こうして考えると、吉良吉影もある意味ありふれた人間であるように思えてくる。
 考えてみれば吉良吉影は人間的にまともなのかもしれない。
熱意が足りないとは言われているが仕事はこなしているらしいし、川尻浩作として潜伏するときには自分の命がかかわっているというのもあるかもしれないが筆跡を完璧に模倣しようとする真面目さが垣間見えた。
異様な性癖と殺人癖が致命的ではあるが、それさえ無ければ優秀な社会人だったのだろう。あたかも吉良吉影が真人間であるかのように思えてきた。

こんな風に目に映るものを偽って日々を生きていこう。
社会に対して恐怖を覚えてしまう自分にはそれしか方法がない。
そんな異常さをどうにか隠して吉良吉影でも叶わなかった平穏な日々を求めていく。

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