誕生日プレゼント
精神疾患を持っている。
3月まで、B型作業所に通っていた。
その作業所が大好きだった。
わたしは幸せだった。
けれど、ふとしたことでわたしは調子を崩し、そのB型作業所を退所した。
本真珠のアクセサリー制作、というのが、その作業所のメインの仕事だった。
ときどき工賃から、商品を買わせてもらうこともあった。
社長が宝石の会社をふたつやっている人で、作業所の本真珠も、卸価格だったのだ。
買わせてもらったアクセサリーは、今も大切にしている。
7月が来れば50歳になる。
50歳の誕生日という節目に、なにか特別なものを買って、自分へのプレゼントにしよう、とは以前から考えていた。
その記念の品に、お世話になったB型作業所のアクセサリーを買うことを考えた。
そこで、6月上旬、そのB型作業所に電話して注文を入れた。
「急がなくていいんです。
7月中旬くらいまでに、イヤリングをおねがいします」
わたしの誕生日は7月19日だ。
施設長は、明らかに戸惑っていた。
(その作業所を退所した理由が施設長とのトラブルだったせいだろうか)
けれど、彼は注文を受けてくれた。
数日後、作業所からラインで連絡が来た。
好みの商品を選ぶように、と、様々なイヤリングの写真が届き、ひとつを選んで注文した。
そして、銀行から代金を振り込んだ。
先方が入金の確認をしたのは、今日だった。
送ってくれるのは7月中旬にしてほしい、と言ってみたけど、入金後のお取り置きはあまりしないとのことで、準備ができ次第すぐに発送します、と連絡が来た。
まあいいや、と思った。
そして午後は部屋でボーっとしていた。
夕方4時前に、インターホンが鳴らされた。
なんだろう。
今日は宅配便が届く予定はなかった。
インターホンのカメラに映った女性の顔が、よく知っている人に見えた。
わたしは通話ボタンを押した。
「とりこさんこんにちは!
〇〇のAです!
大切なものなので直接お持ちしました!」
えっ?
作業所の職員さんのAさん?
わたしにミシンなどの指導をしてくれていた人だ。
「Aさんですか!
開けます!」
マンションの玄関ドアの解錠ボタンを押し、外に出てエレベーターのところまで走っていった。
エレベーターから出てきたAさんは
「とりこさん!」
とわたしを抱きしめた。
気のせいだったのだろうか。
Aさんが、うっすら涙ぐんでいるように見えた。
Aさんと、少し話し込んだ。
また作業所に戻りたい、というと、Aさんは
「週1日からでもいいから、また来てみるといい。
社長にもわたしから話しとく」
と言った。
そしてイヤリングの入った小包を受け取り、Aさんと別れた。
部屋に帰り小包を開けた。
イヤリングは、思ったより大ぶりなものだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1718625447932-hN3hCEnseO.jpg?width=800)
ていねいに書かれたイラストに感動した。
そして、おまけのプレゼントも入っていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1718625964441-N8I2dq9Bib.jpg?width=800)
大急ぎで作られたもののようだった。
木材にほんの少し、粉がついていた。
わざわざ作ってくれたのだろうか。
そして、手紙が入っていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1718626876143-f4DRtIZ6Le.jpg?width=800)
いちばん上の文章を書いてくれたのは、大の仲良しだった、しみティーだ。
ああ、しみティーは、絵は得意なのに字を書くのは下手なんだ。
ちょっと笑って、じーんとした。
職員さんたちからのメッセージも嬉しかった。
みんな、お誕生日おめでとうとか、HAPPY BIRTHDAYとか言ってるけど、来月だよ。
7月19日だよ。
けれど、こんなにしてもらえたら、感動してしまう。
わたしの誕生日は、もう今日でいいよ。
わたしの誕生日は6月17日。
それでいこう。
それでいい。
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