わすれないために

私は約6年前、私は夫の転勤で北海道に住んでいた。その時、私は出産を控えていた。初めての出産·子育てを知り合いが一人も居ない土地でする事に全く不安がなく、新しい生活にワクワクしていた。

今考えると脳内がお花畑だったとしか言いようがない。

切迫早産で入院してしまったので北海道で出産できなかったが、娘を生んで1ヵ月半後に北海道に旅立った。

一日中、なれない土地で泣くことしか出来ない子どもを育てる生活が始まって、私は不安に襲われるようになった。お世話はこれでいいの?前と生活リズムが違うけど成長なの?どうして毎日夕方に泣くの?と。

新しい生活はワクワクではなく、不安でいっぱいになった。

「これではダメだ。まずは知り合いを作ろう!」と児童館やベビーマッサージに出掛けるようになり、知り合いが増えて友達ができた。私の生活はやっと「不安」から「楽しい」に変わった。

生活に慣れてくると周りを見る余裕もできた。北海道の人も自然も食べ物も私には合っていて、ずっとこのままここで暮らしたい!と思うほど好きになっていた。

しかし、2年後、夫に辞令がでて離れる時が来てしまった。初めての子育てをした思い出が沢山詰まっている場所だ。ものすごく悲しかった。

今は住むことは出来ないが、将来住むことは出来る。私は「いつか住む日」のために北海道のニュースを住んでいる時と変わらず集めるようになった。

新しく出来る商業施設。駅前の開発予定。目まぐるしく街が変わる様子が入ってくる。

今度行く時はどこに行こうかな?と考えるだけでワクワクしていた。

しかし、楽しいニュースだけが入ってくるわけではない。娘の雛人形を買ったお店が閉店することが分かった。

雛人形を買う時、「翌年に引っ越す事確率が99%だから買いたくない」私と「お祝いを貰ったからには買わなくては!」と考える夫の間でかなり揉めた。

私が反対した理由は引っ越しだけでなく、2月に入ってから買うと時期が遅すぎて余り物しかないこともあった。夫は「生まれて初めての雛祭りに雛人形がないのはかわいそうだ!」と言う。私は「妹が生まれるまで4年間、雛人形がなかったけど何とも思わなかった」と何度も伝えたが「かわいそうだ!」の一点張りで話を聞いて貰えない。仕方がないので買うことになった。

案の定、良いと思うモノは売り切れの店が続出して雛人形選びは難航した。

そんな中、最後と思って立ち寄ったショッピングモールで「これなら買っても良い」と思える雛人形の在庫があり、買うことが出来たのだった。

そのショッピングモールが閉店する。雛人形だけでなく、友達と子どもをキッズスペースで遊ばせたり、赤ちゃん用品を買ったりした思い出もあった。

そんなお店が無くなるのはとても悲しい。大きなお店の閉店情報しか分からないが、近所にあったお店も閉店したりしているのだろう。

遠い所から変わり行く街を想像するしか出来ないが、同じように無くなるお店での出来事を雛人形を飾る·しまう度に思い出して、忘れないようにしたい。





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