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Podcast#4農業経営者の機能と能力

先日、Podcast「東大生の米談義」#4を配信しました。
#4のテーマは農業経営者の機能と能力、特にアントレプレナーシップやエフェクチュエーションについてでした。
最初は手探り、手が届かないところもあるかと思います。
回を重ねる中で修正していくために「振り返り」まで含めてPodcast「東大生の米談義」とします。


一言名言

人の行く 裏に道あり 花の山

 千利休が詠んだとされるこの詩は、現在では投資における相場格言としても広く使われる。

 下の句まで詠むと「人の行く裏に道あり花の山 いずれの道も散らぬ間に行け」となり、詩的な趣が一層美しく響く。
 簡単に現代語訳するなら「綺麗な花を求めていくのであれば、誰も行かない裏道を行ったほうがいい」といったところ。大勢の人と同じ行動をすると安心できるためつい流されていきそうになるが、皆が行くところに追随しては大きな獲物を得ることができないという示唆を与えている。
 コロナショックやリーマンショック、世の中の大多数が悲観的になるその時に動ける人が、最終的な勝者になり得るのだ。

 港区で空を見上げれば必ず視界のどこかに入る森ビルも、その創業者である森泰吉郎さんが戦後焼け野原になった東京にチャンスを見出したことに始まっている。今回のテーマである「農業経営者の機能と能力」特にアントレプレナーシップに絡めての選択であろう。

 この詩から一つ想起したのがAppleやPixarの創業者 スティーブ・ジョブスがインタビュー中に溢した以下の言葉。

 Life can be much broader, once you discover one simple fact.
 And that is, everything around you, that you call life, was made up by people that were no smarter than you. You can change it, you can influence it, and you can build your own thing that other people can use.

 多少穿った考え方に聞こえるかもしれないが、「世の中の全てのものは何も自分より優れた人間が作ったものではないし、変革し、影響し、自ら築き上げることもできる。そしてその事実に気づいた瞬間から、世界はもっと拓けて見えるのだ。」という言葉は、世の中の仕組みを無条件に受け入れ、折り合いをつけ、流れに身を任せる生き方に囚われてきた人々に活路を、希望を与える。

 数多の経済危機や逆境の中でも、自分を取り囲む全てのものは、如何様にも変えられるのである。一度しかない人生、我が道を行こう。


アントレプレナーシップについて

 アントレプレナーシップはしばしば起業家精神と訳され、これを育てようという活動が年々増加しているように感じる。

 中でも今回は農業経営者、すなわち農業で’起業’しているとも言える人々の「機能と能力」といったテーマで、Effectuation(エフェクチュエーション)とCausation(コーゼーション)といった対立する二つの概念の紹介から始まっている。

 エフェクチュエーション(別名:実行理論)はインド出身の経営学者、サラス・サラスバシーが2008年に書籍『エフェクチュエーション: 市場創造の実効理論 』の中で体系化した意思決定の理論であり、優れた起業家に共通する特徴、考え方とされ2015年より日本に広まった。

 『市場は「発見される」ものではなく「つむぎ出される(fabricated)」ものである』という言葉にも代表される考え方で、予測不可能な未来の中で新たな世界を想像することを目指す。

未来は予測可能であり、ゆえに目的から逆算する「コーゼーション(因果推測)」という従来の考え方の対比として、cause and effect(因果関係)から着想を得て創出された。

エフェクチュエーションは自分の保有する経営資源が何か、自分に何ができるかを考えて行動に移す意思決定の連なりであり、求める結果から手段を考える普通の思考法とは逆の発想として、花の山へ通じている。

0から1を生み出すフェーズでは「エフェクチュエーション」が、1を10にするフェーズでは「コーゼーション」が有効であると言われるため、どちらが上という対立関係より状況に応じて使い分けられる二つの手法であるということには注意した上で、0から1のエフェクチュエーションに着目して掘り下げていこう。

持続的イノベーションにより製品機能が顧客のニーズ水準を超え、顧客価値の頭打ちからコモディティ化したお米業界においては重要な洞察を生むだろう。


Effectuation①手中の鳥の原則

 Podcastでは鶏肉でシチューを作る話と勘違いした変な人もいたが、「あなたが手にしている一羽の鳥は、姿の見えない多くの鳥よりも価値がある。」という意味を持つ「手中の鳥」の原則。

☑️「自分が誰であるか(Who)(選好やアイデンティティ)」
☑️「何を知っているか(What)(知識や経験、技能)」
☑️「誰を知っているか(Whom)(ネットワーク、人脈)」

など手元にある資源を最大限に活用せよという考え方である。


Effectuation②許容可能な損失の原則

利益を最大化することより、まずどこまでの損失が許容できるかから発想をスタートせよという考え方。

起業家は新しい事業やプロジェクトに投資する際に、予測不能な未来に対し、最大でどの程度の損失を許容できるかをということを事前にすり合わせ、考慮する。

今回の一言名言に絡めて投資格言で言うなら、「見切り千両」である。

 「なせば成る なさねば成らぬ何事も 成らぬは 人の為さぬなりけり」で有名な、米沢藩再生を成し遂げた江戸時代屈指の名君上杉鷹山の隠れた名言働き 一両、考え 五両、知恵借り 十両、コツ借り 五十両、ひらめき 百両、人知り 三百両、歴史に学ぶ 五百両、見切り 千両、無欲万両」からの引用で、損失が出た際の冷静な手仕舞いを推奨する。

 投資に対するリターンが見えない中で、事前に決めていた許容可能な損失を上限として行動することで、リスクコントロールをする。いきなり巨額を投資するではなく、小さな一歩として少額の投資のトライアル&エラーを繰り返し次へと進むことの重要性を示唆している。


Effectuation③クレイジーキルトの原則

 「クレイジーキルト(Crazy-Quilt)」とは、大きさも柄も違うある意味クレイジーと言えるキルト(布切れ)を縫い合わせて作られたパッチワークのこと。
 要はユーザー(顧客)や競合他社、従業員など、起業家をとりまくステークホルダーと多様な関係性を保ち、パートナーシップを作りゴールを目指せという考え方だ。

 不確実性の高い環境ではそもそも誰が顧客になり、競合になるかは分かりえないため、積極的に外部とのパートナーシップも構築し、時に競合相手であっても交渉を重ねてパートナーになってしまうくらいの心意気が肝要となる。

 Podcastの中でRICE DAOにおけるクレイジーキルトを聞かれた際、現在RICE DAOに貢献するメンバーやアドバイザーの紹介のみに留まったが、DAOの性質からしてお米の未来を思う人は皆仲間である。数日中に公開予定のRICE DAOのDiscordチャンネルにもぜひ入られたい。


Effectuation④レモネードの原則

 アメリカには「When life gives you lemons, make lemonade(人生がレモンをくれたら、レモネードを作ればいい)」という諺がある。

 レモンのように酸っぱく顔を顰めるような予期せぬ出来事や偶然の発生を機会、すなわちチャンスと捉えて利用することで新しい価値を生み出そうという考え方である。

 エフェクチュエーションの肝とも言え、挑戦を重ねる中で失敗を恐れるのではなく、その失敗から何を学び成功に繋げるかを重視している。

 堀と芳野の「災い転じて福となす」のエピソードバトルからも読み取れるように、災いから決意や思想、発想の種を得ることもまた福なのである。


Effectuation⑤飛行機のパイロットの原則

 これは操縦桿を握る飛行中のパイロットのように、常に変化する計測器の数値を確認して変わりゆく状況を冷静に観察し、臨機応変に対応せよという考え方。

 不確実な状況下で自分自身で制御可能な面に焦点を当てるということも含意し、エフェクチュエーション全体として、一貫して手元の資源から破壊的イノベーションを生み出すことを志向している。

 Podcastではこの5つの原則に基づく「エフェクチュエーション」が現状小規模な経営体が多い農業に応用できるとしてお米においてはどうかという質問があった。

 一例として取り上げたのが「石高プロジェクト」。お米をWEB3に絡めようと考えついた時、この名前を見て悔しさを感じたを覚えている。WEB3やDAOはShared-goal(共通目標)のもとに集まった人々でトークンを用いた独自の経済圏を構築することができることが特徴とされるが、石高制とはまさに、日本に古くから根付くお米本位の経済圏を指すからである。

 石高プロジェクトは農家さんをアーティストとして捉え、さながらファンがアーティストに自分のための絵を描いてもらうように、自分のためのお米を作ってもらうことを可能にする受注生産的システムだと理解している。

 これはクレイジーキルト的にWEB3とお米を組み合わせた先進的な取り組みとして注目に値し、この事業が進む中でハードルが現れたとしても「レモネードの原則」や「飛行機のパイロットの原則」で乗り越えていくことだろう。

 この後「資本主義は農業が苦手である」と林から補足が入り、農業は土地という制限された資源を生産手段にするために資本主義としては拡大が難しいと言われきたこと、その一方で今はイノベーションの進歩で土地に縛られない農家が増加していることを加えた。都内に植物工場を建てて野菜を生産しているPlantxさんについては農業の制約を飛び越えたイノベーションの好例であろう。


農家さん紹介

 今週紹介した気になっている、お世話になっている農家さんは千葉県大多喜町の「ESDGZ OTAKI.EXE」さん。

 人口8000人で過疎化が進む町にできた3人制プロバスケチームで、20代の若者が『大多喜町のヒーローになる』をテーマに、都会から移住して農業×スポーツで過疎化が進む大多喜町でSDGsを推進されている。

 少し今回のテーマに絡めると、スポーツは失敗が当たり前、最初はルールもろくに理解できず、体の使い方も手探りで段々できるようになっていくものである。それ故にスポーツマンは「出来るまで続ける」根性が育ってきたために、今この2つのキャリア実現出来てるのではないかと推測する。

 同様に、起業中の失敗など、野球で最初間違えてサードベースに走ってしまうようなもの。野球やサッカーなど、スポーツが好きな東大生の米談義メンバーもまた、エフェクチュエーションが染み付いていることだろう。

 話が逸れたが、スポーツマンとしての共感、農業分野でチャレンジする姿への共感から応援したくなったために紹介させていただいた。籠球(バスケ)のお米ということで#籠米でコシヒカリを販売されている他、色々なグッズを見つけることが出来るため、ぜひ以下のリンクをチェックしてみてはどうだろうか。


ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回#5はお米業界の全体像を配信しています!
次回もお楽しみに!



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