読みやすくした遠野物語②1-2
遠野郷は、現在の岩手県陸中上閉伊郡の西半分に位置する、山々に囲まれた平地です。この地域は、新町村と呼ばれ、遠野、土淵、附馬牛、松崎、青笹、上郷、小友、綾織、鱒沢、宮守、達曾部の一町十村に分かれています。近代では西閉伊郡とも呼ばれ、中世には遠野保とも呼ばれていました。現在、郡役所がある遠野町は、この地域の中心地であり、南部家の一万石の城下町です。城は横田城とも呼ばれます。
遠野へのアクセスは、花巻の駅で降り、北上川を渡り、その支流である猿ヶ石川の渓谷を東に十三里進むと、遠野の町に到着します。この町は山奥にありながら、珍しいほど繁栄している場所です。伝説によると、遠野郷は大昔、一面が湖で、その水が猿ヶ石川として流れ出し、自然に村落が形成されたと言われています。谷川が猿ヶ石川に合流する場所が多く、「七内八崎」と呼ばれます。内(ない)は沢や谷を意味し、東北地方の地名に多く見られます。
遠野郷の「トー」はアイヌ語の「湖」を意味する言葉から来ているとされ、「ナイ」もアイヌ語です。
遠野の町は南北の川が合流する場所にあります。昔、この町は「七七十里」と呼ばれ、七つの渓谷から七十里奥から物資を集め、市の日には馬千匹、人千人の賑わいを見せました。周囲の山々の中で最も高いのが早池峯山(はやちねさん)で、北方の附馬牛の奥にあります。東方には六角牛山が立ち、石神山は附馬牛と達曾部の間にあり、他の二つよりも低いです。
古くからの伝説では、女神が三人の娘を連れてこの高原に来て、今の来内村の伊豆権現の社に泊まった夜、母の神が「今夜良い夢を見た娘に良い山を与える」と言って寝ました。夜中に天から霊華が降り、姉の胸に止まったのを、末の娘が目覚めて密かに自分の胸に置いたため、末の娘が最も美しい早池峯山を得、姉たちは六角牛山と石神山を得ました。若い三人の女神はそれぞれの山に住み続け、遠野の女性たちはその嫉妬を恐れて、この山々には遊びに行かないと言われています。
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