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神田川の秘密25 長者橋界隈の出来事(1)

二十五 中野・長者橋近辺の異変(1)

 名前からすると、この橋こそ朱色に塗られていてもよさそうだが、欄干の形は平凡で色も地味なグレーだった。神田川と交差している通りは山手通りで、長い間立体交差と高速道路の地下道工事をしていたが、高速環状線につながる地下トンネル工事も終わり、進入ランプの名前は中野長者橋。車はきれいに流れている。山手通りは長者橋から少し北へ行くと青梅街道と交じわる。南下すれば西新宿、初台を抜けて中目黒、大崎広小路へと繋がっている。2021年3月9日、春はすぐそこに来ていた。

長者橋の名前の由来はそれなりのドラマになっている

 長者橋を300mほど北に上がった成願寺に寄ってみるつもりにしていた。曹洞宗の寺だが、興味をそそる伝承があり、先の大戦の遺構も残されている。が、その前に、印象に残った二つの景観に触れておきたい。中野新橋からスタートして間もなくの2本目、花見橋の脇に東京都・下水道局の看板を見かけた。今までに見た東京都の看板で建設局以外のものは初めてだった。

東京都下水道局の看板

『この河川の下には、下記のような埋設物があります』の表題で、
「下水道管(外径3150mm内径2400mm) 、これより上流11、7m 深さ上端10、4m 下端7、25m 幅3、15m」

 神田川の地下10mには3mを越す径をもった大きな下水管が通っている。おそらく大型の丸い鉄管だろう。川に工事を施しているのは建設局だけではなかった。神田川は行政のいくつかの部局の手で、いじくりまわされている。いや、それは少々意地の悪い言い方で、正しい言い方ではない。矯正させられている。いや、それも正鵠をついていない。高度利用されている。

桜橋・花見橋と来た後の月見橋

「やれやれ、神田川も大変だな」と思いながら花見橋に続く月見橋まで来たら、真正面に高々と聳える都庁のビルが見えた。南北のタワーを天に突き上げ、下々を睥睨している姿に映った。それを知ってか知らずか、神田川は都庁へ吸い寄せられるように流れているのだった。

正面のビルが東京都庁

 月見橋の次は一ノ橋という。
右岸に今まで見たことのない建築物を発見した。周りの景色とは一線を画している。そのビルの脇には1坪ほどのスペースに木造りの社があって、ミニチュアの祭壇もある。道路脇に良くあるお地蔵さんのかけ小屋とサイズは同じだが、こちらはそれとは比べ物にならない華麗な造りで、間口1mしか無い正面の柱には30㌢の筒型をした賽銭箱が取り付けられていている。柱の後ろを見ると、赤く塗られたガチャガチャ・ポンのマシンが置いてある。硬貨を投入すると拳大のプラスティックボールが転がり出てくるしかけで、ショッピングセンターなどでよく見かけるあのマシーンだった。気後れしてコインの投入はしなかったが、まさか球の中にピカチュウが入っているわけではないだろう。「御神籤」ではないかと想像した。

神社のミニチュア
縮尺された神社そのものだった

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