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ゴッドファーザー

 好きな映画ランキング5本の指には入るのが、世界最高のマフィア映画『ゴッドファーザー』だ。『グッドフェローズ』『スカーフェイス』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』など有名どころのギャング映画を見たけど、『ゴッドファーザー』は頭一つ抜けた男たちのカッコよさがある。

 戦後ニューヨークの裏社会を牛耳るイタリアンマフィアのファミリーの長ドン・コルレオーネが派閥争いによって銃撃を受け、衰退の一路を辿るコルレオーネファミリーを、若きマイケル・コルレオーネがそのキレッキレの頭とカリスマ性を駆使して再び最強のマフィアの座へと導いていく物語である。

 裏社会の壮絶な巨大悪を描くこの映画は、陽気な結婚式の傍ら、”ゴッドファーザー”ことドン・コルレオーネがある葬儀屋の悩みを聞くシーンで幕を開ける。個人的に、このシーンは映画全体の中でも随一のお気に入りシーンだ。光と影の使い方が巧みすぎる。何度見ても、思わず「わ、悪うぅぅぅ、、、」と唸ってしまう。映画序盤にニューヨーク裏社会の頂点たるゴッドファーザーの威風を浴びせられ、この映画が世紀の名作であることを実感させられる。ちなみに、巨悪とは対照的に陽気な結婚式のシーンから映画を始めるというのは黒澤明監督からのインスピレーションらしい。

 計り知れない財力や暴力をもったファミリー同士の抗争という、作中ずっとヒリヒリと漂っている緊張感の中で、特に息をするのも忘れるほどその緊張がクライマックスになるのは、マイケルが父親と自分の仇を討つ場面だ。絶対絶命の不利な交渉の場にて当時堅気だったマイケルが、ゴッドファーザー襲撃の発端となった人物ソロッツォと自分を殴った悪徳警官に向かって隠し持っていた銃をぶっ放す。事前に兄弟たちと何度も復讐のシュミレーションをし、堅気のマイケルが一人で極悪人二人と冷静で上品なディナーを交えた交渉をした後、周囲の客の混乱を招くためにわざと発砲音が大きくなるように細工されたピストルで初の人殺しを実行する。叫び声のような不気味な発射音を合図に、マイケルはマフィアとしての血塗られた人生をスタートさせるのだ。

 その後コルレオーネ村に雲隠れしたマイケルであったが、ゴッドファーザーの死後、遺言通りにコルレオーネファミリーの長となったマイケルは悪のカリスマ性をメキメキと発揮し、コルレオーネファミリーを再び一大マフィアへとのし上がらせる。温和だった彼の顔がいつの間にかチンピラなんかではない、映画最初に映し出されるゴッドファーザーの風格を纏っているから恐ろしい。ファミリーの裏切り者、カルロを問い詰めるシーンではまさに「わ、悪うぅぅぅ、、、」という最高に男の子の心を刺激する巨悪カリスマの顔をしていた。表情の映し方、雰囲気の作り方が完璧である。

 拳銃やマシンガンなんかをぶっ放しながら薬に手を出し、女性を人間とも思っていないようなチンピラがその無鉄砲さで裏社会をのし上がっていくストーリーも嫌いじゃないが、この『ゴッドファーザー』のように非常に知的で紳士的なジェントルマンたちが、ビシっとスーツを着て煙草を吸いながら冷酷に策略と暴力を駆使してライバルを蹴落としてゆく様は何度見てもビリビリと痺れる鳥肌ものだ。最高にかっこいい男を見たくなったらこの作品。



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