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9/6 『ぼくらの第二次七日間戦争 再生教師』を読んだ

前巻で行方不明になったままその後が描かれなかった女子生徒が、その後無事救出されていたことが判明した。よかった。前巻のうちに判明してくれてれば尚よかったが。
そして今回はひとみの勤める中学校で、黒板にマザーグースの詩が書かれるという怪事件が起こったところから始まる。ひとみの中学校といえばオメガ事件が記憶に新しいが、今巻ではオの字も出てこなかった。あれから推定2~3年は経っているはずだから、事件を知る生徒もいなくなって、自然消滅したのだろうか。
序盤は最近の子どもたちの倫理観や死生観を憂える会話が交わされ、やや悪趣味ないたずらをして楽しんでる子らに、やれやれどうしたものかなんて話し合う様が描かれる。作中で起こった少女殺人事件の犯人であるかのように母親に思わせてからかうなど、まあ確かに過激だが、しかしぼくら連中だって水子の霊を降ろした霊能者を装っていろいろやってたしな……。そこまで心配することもないんじゃないか。実際、そのいたずらしてた二人は今回のぼくらユース枠として活躍している。
だがそうした子どもたちへの懸念はどこへやら、中盤以降はイカれた殺人鬼の言動に振り回されながら必死にその動向を追うという、ちょっとしたサスペンスホラーな話になっていった。少女殺人事件の犯人は子どもかもしれない、今の子どもは俺たちの常識じゃはかれないから……とかやっていたのに、結局犯人は壊れた心を持つ大人で、最初の子どもたちの話は何だったんだと思わなくもない。英治はいろいろ右往左往した挙げ句、真犯人が誰だったかも逮捕されるまでわからず、「俺たちって、人間のことをなにもわかっちゃいない」と嘆いたりして、もしかしてこれは英治の挫折を描いているのだろうか。彼も30を過ぎてすっかり大人で、子どもの心をわからなくなってきてるし、子どもを殺そうとする親の心もわからない、人間のことをなにもわかっちゃいない、という……。
ただそれにしたって物語の展開はやっぱり胡乱で、いち読者としてもあんまりしっかりわかってない。いろいろ証言を総合すると、益男の義理の父の康平と本当の父である町田は双子の兄弟で、康平は刑務所に服役後、顔を変えて夏子と再婚……いや待て、そもそも町田は服役することになった康平の代わりに益男の父になったわけだから、康平は義理の父でありながら血縁上の父でもある? あれ、でも英治に電話をかけてきたキラーグースは康平とは別人みたいなことを言ってるし……誰がどこまで本当のことを言っているのか? ホームレスの晴男はなぜ橋から人形を吊るすとか、捜査を撹乱するような真似をしたんだ……益男の父親に頼まれてというが、どっちの? マイナス・クラブの理念も、それ自体は興味深くはあるが、今回の事件にはあんまり適用できないのでは……。ここまでくるともう気にもならないが、タイトルの意味もよくわからないな?
情報がとっちらかって整理できないでいるまま、最後の1ページで英治の唐突なプロポーズ。おいおいおい、どんなタイミングで言ってんだ。「ラスト4行に衝撃の結末!」じゃないんだから。そりゃまあ、相原も結婚したし、時間の問題というやつだったのかもしれないが。次巻がラストだからってさあ。
そう、次巻はとうとう本当にラスト、まあ角川つばさ文庫版で中学生編の書き下ろしが今も出続けているものの、次巻を読んだら「この先」はもうなく。おそらく今後書かれる見込みも薄い。これでお別れではないが、共に歩む時間は次が最後か。寂しくなっちまうな。

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