9/15 宇野朴人『七つの魔剣が支配する』を読んだ

面白かった。
事前にツイッターで作者が「ライトノベルでハリポタ」みたいなことをつぶやいており、前作最終巻末の予告編などを読んでも確かにそんな感じというか、喋る花とかまんまじゃんって感じで権利とか大丈夫かなとさえ思ったが、蓋を開けてみれば、ハリポタとはだいぶ違う、日本ライトノベルらしいあれやこれやがちょいちょい突き出ていてよかった。あれやこれやというのは、たとえば魔法学校の生徒たちがみんな白杖と杖剣を持っているのにひとり日本から来たヒロインは日本刀を杖代わりにしてるとか、校長先生の入学式での格好がエロいとか、たった3年か4年先輩なのに人外レベルでヤバい連中がどこどこ出てきたりとかそんなとこ。まあ俺もハリポタ前半くらいしか観たり読んだりしてないので、もしかしたらハリポタも後半はインフレしてるのかもしれないが。しかしそんな格の違う先輩方をして地獄イベントと称される、満開街道の一発芸披露チャレンジとは一体どれほどの地獄なんだろうか。
ヒロインの造形は、前作においてイクタが散々嫌悪した「英雄」のそれに近く、将ではないからそこまで大きな存在ではないものの、仲間と共に狂喜を叫びながら死地へと突っ込む様は英雄よりひどいとも言えそう。その性質は、仲間たちのおかげもあってひとまずなりを潜めたようだが、折につけ飛び出したりするんじゃないだろうか。
仲間と言えば、主人公とヒロイン達の仲間の一人に成績優秀人格高尚委員長タイプ優等生お嬢様がいるが、これがそのスペックを何らトチることなく十全に発揮しているので、逆に新鮮で面白かった。温室育ち特有の本番への弱さとか土壇場での対応の悪さ、みたいなの全然なく、何事も如才なくこなす主人公と同等かそれ以上に完璧に振る舞うので、主人公の役目食われちゃいそうですらある。
しかしそんな危機感を覆すラストの展開。むしろ主人公が「こう」だからこそ、光の存在としての彼女がいたのだなと納得する。1巻ラストにおいて、自らの属する組織、共同体への敵対を宣言する……というのは前作『天鏡のアルデラミン』と同様の展開ではある。問題は前作がイクタとシャミーユのたった二人の反逆だったのに対し、今作ではすでに一程度の勢力が揃って、しかも主人公オリバーは彼らの神輿であること。その差が最終的にどんな結末に至るか、最後まで見てみたい。
それにしても、締めの一文は実にカッコいい。言葉だけでなく、字面……だけでもなく、ページ全体がギュッと締まる感じ。収まってるページ全体を、何度も見返したくなっちゃう。

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