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6/11 『ぼくらのラストサマー』を読んだ

面白かった。

まだ続編もあるが角川文庫におけるぼくらシリーズの最終巻は、
「菊地先生、彼女から電話」
という台詞から始まり、なかなか印象的である。大学を卒業して、とうとう正式に教師となった英治なのだ。もうすっかり大人だ。
実際、今まであれだけ「悪い大人をとっちめろ」とやってきたのに、今作においては倒すべき大人などは出てこない。ただ、子どもたちに絶大な人気を誇るミュージシャン・クニオにまつわる騒ぎに巻き込まれるだけだ。いや、正しく言えば巻き込まれさえしてないかもしれない。子どもたちが巻き起こす騒ぎを、英治ら大人たちは必死で追いかけていくのみだ。まるで、かつて英治たちが散々にいたずらを仕掛けた教師たちのように。

数年前、『ぼくらの七日間戦争』を小学生の時分以来十数年ぶりに読み返したとき。久々に英治や相原たちと再会してその変わらぬ暴れっぷりを痛快に思う一方、子どもたちに翻弄されこてんぱんにされて悪態をつく悪徳教師ら大人たちの言い分にも理解を示してしまう自分に気がついて、ああ、俺はもう英治たちに懲らしめられる大人の側に来てしまったんだなァ、としみじみ思ったものだった。
でも、ことここに至って英治たちもまた、次世代の子どもたちの考えがわからず、右往左往四苦八苦する大人の側に来たのだ。それをどう思うべきか、ちょっと悩む。数年前に抱いた一抹の寂しさを慰めてくれるようでもあり、「お前もこっちへ来ちまったのか……」と寂しさをいや増すようでもあり、「いや、時系列的には英治たちの方が先に来てたのだし、これでようやく追いついたってこと?」と再び仲間意識が甦るようでもあり。
英治たちは、大人になっても子どもの心を持ち続けようと、ぼくらの仲間たちとともに決意を新たにするが、果たして俺は同じ決意を胸に持つことができるかどうか。まあ、作品の年代を考えると、俺はむしろ英治たちの次世代、小さい頃からインターネットなどで情報を過剰に摂取してる世代ではあるんだけど。

しかし最終巻ではもう、英治とひとみはまるで最初からずっとそうでしたみてーな感じでイチャイチャしつつ相応に連携の取れたコンビネーションも見せたり、相原とはそれ以上に通じ合っててほとんどテレパシーめいた疎通具合だったりしてて愉快だったり、柿沼や秋元はようやく大学合格してて頑張ったなぁ~とか愉快にみんなの行く末を追ってたけど、まさか最後に日比野と純子がくっつくとは。前巻あたりからほのめかされてはいたものの、ルチアとくっつかなかったことにびっくりだ。残念というかなんというか。せめて、今後も友達ではい続けてあげてほしいな。

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