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3/25 『七つの魔剣が支配するⅨ』を読んだ

表紙を見てわかるとおり、決闘リーグの決勝戦を一巻ほぼまるまる注ぎ込んで描き切っている。そして表紙を見てわかるとおり決勝のマッチアップがどことどこのチームであるかもう隠す気も無いのだが、それがまったく問題にならない熱い戦いを堪能した。

まずはオリバー隊vsヴァロワ隊。おそらくオリバーの同期組における最後のネームド枠といったところであろうヴァロワちゃんさん。才能とセンスで圧倒しオリバーの重んずる友情を否定する敵役だが、そうした相手に友情の力で対抗するのでなく、その才能のルーツをギチっと分析してやり、事前の圧倒的予習復習でもって適切に対策してくるの、オリバーのオリバーたるゆえんであり流石ではあるがちょっと性格悪いな……と思っちゃった。結構挑発効いてたんだね……敵に回すとおそろしいおとこ。ヴァロワの戦い方もホバー走行で仲間の後ろに姿を重ねて隠すとかどこの三連星だって感じで楽しい。今後どういった変化成長を遂げてくれるか楽しみでもある。最後の同期組、これで出番終了ってことは当然ないだろうから。
続くコーンウォリス隊vsアンドリューズ隊。家族との確執を抱えた良家の才女と彼女に拾われた半人狼、互いに想いを重ねつつも結ばれぬ運命に対してそれでもできることを模索し続けた結果、魔法界に前人未到の新たなる研究成果をもたらすとか、これだけでも一本作れそうなウマウマ設定。こりゃアニメ化の際には固定ファンがどっとつくんじゃないでしょうか。期待です。そんでシェラはちょっと思ってた以上のポテンシャルだったな。元々凄かったうえになかなかお披露目できないだけでめちゃめちゃ成長してたってことだろうか。父親が直々にストップかけるくらいだし、こりゃ今後の展開によっては更に存在感を増してくことになりそう。
で、その父親であるセオドールパパだけど、依然として本音が読めない。トリックスターとして出てきて、Ⅳ巻での様子で実はただの戦闘狂なのかと思いきや、こうして複雑な心情もチラ見せする……娘に対してもそうだけどオリバーの両親に対しても何か一物あるのかよ。全方位激重か? なんかこう、ことによってはオリバーの復讐や魔剣、異界まわりと同等ぐらいのデカい話が渦巻いてそうだな、この父娘まわりは。
そして最終戦、オリバー隊vsアンドリューズ隊。なんかもう、立派になっちゃって、Ⅰ巻で君がどんなヤツだったかもう全然思い出せないよアンドリューズ。ダメなマルフォイみたいなヤツだったんだっけ? 当初の鬱屈はシェラとの交流の中で培われたものなのに、その解消と脱却・成長に際して目指したのはオリバーというのがまたいい。それこそが学校という世界の醍醐味なのだろう。激闘を終えて、これまでの人生を清算し、そして新たな関係に踏み出すアンドリューズ。あたかも、この2人の物語であるようだ。
で、それを間近で見せつけられたナナオは、生まれて初めて嫉妬に燃えるのね。というか今気づいたが、今巻の表紙ってⅠ巻のオマージュにもなってんのか。他に、戦う二者の構図になってる巻ないもんな。すると後ろのナナオの神妙そうな表情の意味がまた……。ここしばらくあんまり活躍しないなあとやきもきしていたけど、何よりそう感じていたのは本人であったかもしれない。ある種一線の一つを踏み越えて、関係に不可逆の変化が訪れたこれからにもまた注目だ。
そして不可逆の変化といえばラスト、社会見学ならぬ異界見学でのカティの行動。事前にあんだけ煽られたらああなるよとも、いや煽られるまでもなくいずれは起こったことだろうとも思える魔法使いの業。カティに限らず、いよいよ剣花団の面々もその領域に足を踏み入れる段階に来たということか。
ユーリィも親元と決別し、その親元たるデメトリオ先生も掘り下げが始まった。今のところそんな悪い人ではないっぽいのに……果たしてどうなるのか。三年生編ももう佳境だろう、ここから折り返し……いや、これからが本番なのかもしれない。これまでの中間決算とでも言うべき成果の発揮に満足しつつ、ますますこれからへの期待が膨れ上がる、充実の巻だった。

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