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12/30 『七つの魔剣が支配する ⅩⅢ』を読んだ

なんとも息が詰まる巻。一年生編がアニメ化されたこともあって、四年生の制服で憂鬱な面持ちでいられると否が応でもオフィーリアの悲劇を思い起こさずにはいられない。実際キンバリーにおいてもここらがひとつの節目なのではって感じがある。前巻におけるバルテ姉弟しかり、単純な不運や力不足でリタイアするのではない、ひとしきりの成長を遂げたが為に「魔に呑まれる」という末路が確かな実感を持って魔法使いの前に立ち現れるのが、この時期なのだろう。オリバー達は辛くもそこをしのぎ切れただけでも、上出来だったのではないかしら。
性描写……と一概に言ってしまうのもあれだが、この世界と魔法使いの生き様に照らせば躊躇してらんないとは言え、さすがにそんなんばっかだと辟易してしまうなあ、と思うものの、剣花団の辿る道筋において必要な山場であったことはわかる。避けては通れなかった。ガイもピートもカティもシェラも、魔法使いというどうあっても一般的な倫理観はかけ離れていかざるを得ない宿業を背負い、それを肯定しつつも、だからって未だ手の内にある人の域の温かみを手放さない、その為の努力を惜しまない姿は痛ましくも愛おしい。にしても呪者としての鍛錬を修めて凱旋したガイ、これぞ剣花団のお父さん……と思ったのもつかの間、ちらりと覗かせたオリバーへの感情は、お前もか……!って感じで笑っちゃった。いいよいいよもう、やっちゃえやっちゃえ。オリバーも頷いてくれるよ。
四年生編がこれで終わってしまうとは勿体ないような気もするが、まあ、色鮮やかな枝葉末節は外伝編に譲り、本編は剛直な本筋をがっつり進めていくということなのかな。戦争が始まるらしい。血生臭そうな人たちもたくさん出てきたし、ソワソワしてきます。

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