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8/6 『Missing 神隠しの物語』を読んだ

面白かった。

初めて読む作家。
むかし電撃文庫でブギーポップとか読んでた時に、巻末の作品紹介欄で名前だけは見たことあったのが、新装版が刊行されたのを機に読んでみることにした。
神隠しという怪異、都市伝説に巻き込まれた人々がどうにか奮闘して怪異から逃げ延びるなり撃退や退治調伏なりする話かと思いきや、なんかわりと人間同士のいさかいに展開していくのが意外だった。怪異の発祥とか、怪しげな村の因習とかそういうのが出てこないのが。そして代わりに、そうした怪異に以前から立ち向かってきた謎の怪人物やら怪組織やらが出てきて結構びっくり。それこそブギーポップの世界かよと思えるほど。神隠しという超常的な存在が起点になっているが、それによって明らかになっていくのが人間世界の闇の深さなので面白い。怪異……『彼等』は噂や怪談話などを通して人々の間に認識を広め、それによって現実を侵食しているということだが、だとすると結構軽々しく情報を開示しすぎなんじゃねえかなあの人たち。それっぽい説明だけしてあとは自分たちだけで処理すればいいのに。まあこの高校生たちがなかなかの曲者で簡単に誤魔化せる相手ではなかったということなのだろうが……それでも鈴渡してきたあの怪人の行動はスレスレだったのではないか。人間側でも『彼等』側でもない中立というか第三者というか、そうした存在をも最初っから登場させてるあたりにも、怪異やそれに立ち向かう人間たちよりもまずそうした諸々を含む『世界』を見せたいという意思が感じられた。
最後まで読んでから、冒頭のあやめとの邂逅シーンを読めば、空目がどういうつもりでそんなことをしたのかはわかるけども、それでもまあまあ強引だな。理由をわかったうえで「でもこれやっぱ一目惚れでは……?」なんて思っちゃう。実際のところどうなのかは、続巻を読めば明らかになるだろうか。

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