12/7 『錬金術師の密室』を読んだ

面白かった。
ファンタジィとミステリィの融合ということで僕としては当然ながら上遠野浩平の『事件』シリーズを思い起こしながら手にとってみたわけだが、目次の章題などを見るとひょっとして作者の人も意識したりしてたのかな、と思わざるを得ない。つって、章題が他作品のもじりだとして、一個しか元ネタわかんないんだけど。
ファンタジィ要素である錬金術の設定はどうやらよく作り込まれていて、事件やトリック、あるいは物語のために設定を作ったというより、広大深遠な設定世界のごく一部で今回の事件は起こりました、という感じで、そういうのはなかなかに好み。事件のトリックも、疑いながら読んだくせにあっさり騙されたのでよかった。ただ、テレサがわざわざ嘘の推理を披露して、フェルディナント三世を庇い立てしてやる必要がそんなにあったか……?とはちょっと思った。いちおう「敬意を表して」と理由を言ってはいたが……後から語られる身の上話を聞くに、「自分の都合で人を殺す錬金術師」をそんな理由で許しちゃっていいのかしら。誰にも存在を知られることなく死んでいった浮浪者が哀れだ。世界に七人しか存在しない錬金術師が殺されたと思いきや実は生きているという事実を世に隠して、何か影響とか無いのだろうか。まあそもそもその世界に七人しか存在しないという話じたい、エミリアの存在によって怪しくなってきてはいるんだけど。どうやって確かめるんだろうな、あれ。その辺は次巻以降で語られるのか。ちょうど第2巻も出るようだし、期待。

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