7/20 『孤狼の血 LEVEL2』を観た

面白かった。

最寄りの映画館で「孤狼祭(コロフェス)完成披露プレミア」という先行上映会があったので一足早く観れた。
前作の続編であるが、原作の続編ではなく映画オリジナルの話なのだという。原作続編の『凶犬の眼』はまだ読んでおらずあらすじぐらいしか知らないが、どうも立ち位置的にはその続編と前作の間の話、という感じのようで。もっとも前作も映画と原作ではストーリーにやや違いがあるので、仮に映画第3作が作られたとして、原作第2作をやるのかどうかはわからない。

オリジナルストーリーとしての今作、まあ何をおいても大悪役である上林(鈴木亮平)が全部持って行ったみたいなとこがあった。日岡(松坂桃李)の物語というよりは圧倒的に上林の物語。胎界主で言うところの『暴れる力』そのもの。あまりにもあんまりで、前作で重点的に描かれていた「組織・集団の暴力」といった描写は鳴りを潜め、ひたすら上林という凄絶なる「個人の暴力」が『孤狼』世界を荒らし回っていた。そこに賛否の分岐が生じてしまいそうではあるが、個人的にはアリだ。なんというか、原作付きテレビアニメの劇場版オリジナルストーリーに登場する敵役、みたいな味わいがある。
その暴力の猟奇性は前作を上回る非道さで、初手眼球潰しの指構えが本当に怖い。さらには今作から参加した宇梶剛士や寺島進のような、しかるべき状況でしかるべき魅せ場がありそうないい俳優たちを、ろくな活躍もさせずにブッ殺してしまうのがまた違った意味で非道い。勿体ないとも思ってしまうが、しかしだからこそコイツは飛び抜けてヤバいヤツなんだということを理解させられるのだった。
むろん、日岡の物語としても、苦渋を滲ませつつ面白かった。大上の遺志を受け継いで呉原の街を守ってきたものの、いかんせんまだまだ経験が足らず、警察組織からも策謀の渦に突き落とされて、身も心も削られてゆく様は大変心苦しい。大上のようにやろうとして、しかし大上ほどの人望も威厳も無く、ヤクザどもに舐められてしまうのが見ていて辛い。
さらには信頼できると思った相棒のおっちゃんも実は公安の手先で、見事にしてやられてしまう。ただこれは言ってみれば前作における日岡のポジションそのものなので、自分が大上にやろうとして見抜かれてしまったのと同じことをやられて、それを見抜けなかった……つまりヤクザに対してだけでなく警察に対しても、大上のように上手くやれなかったわけだ。もうボロボロだな。考えてみればこれはこれで「組織・集団の暴力」だな……今作では警察サイドがそれを担っていたのか。前作では大上個人が目立っていただけに。そう考えると本作は1作目の続編というより鏡合わせ的な構成であった。二つで一つというか。

上林の話に戻ると、彼は表向きは死んだ組長の仇討ちを目的として動くものの、実際にはそんな仁義も忠誠心もかりそめで、ただひたすらに暴れてすべてをわやくちゃにしてやりたい男であったように見えたけど、もしかしたら本当の本当にはオヤジへの弔いの気持ちがあったのだろうか、と想像しなくもない。だから師を失って独りもがき続ける日岡とどこかで通ずるところがあったのかと。ただそれは相互理解とは程遠く、互いに歩み寄る気などはさらさら無いのだろうけど。俺もお前も独りきり、頼れる相手は最早どこにもいないのだという虚無を感じ合っていたのではないか。今回は辛くも生き延びた日岡は、果たしてその虚無を埋めることができるのか。

あと、警察側においてのもうひとりの悪役であった嵯峨(滝藤賢一)も地味に良かったと思う。地味ではないが。めちゃめちゃ憎たらしいけど、「治安守ってんのはテメエだけじゃねえんだよ!」とか「俺ら一応公務員だから、何するにも書類が必要なんだよ」とか、ちょいちょい言うことまともなんだよな。

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