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1/24 『図書館の魔女 第二巻』を読んだ

1巻から結構間が空いてしまったが、比較的わけわかんなくならずにするりと読んでいけた。序盤も序盤だし、登場人物も少なかったおかげだろう。
その数少ない登場人物であるハルカゼとキリンの来歴を綴るにあたって作品世界の情勢などを説明してくれたのも助かった。ほどよく内容を思い出せたし、またその国際情勢の模様などもわかりやすく面白い。難しい言葉や凝った言い回しなど多用するのにこんなにわかりやすいのはすごい。
もっともそのぶん物語の進みようは緩い……だからこそ話をじっくり思い出せたってところもあるので悪く言えないし言うつもりもないんだけど……序盤の地下道探索行とかはいかにものちの展開への伏線が張り巡らされている感満載。だがなんなんだ、あの挿絵まで入っといて結局よくわからない装置は。伏線と呼ぶにはあまりにもデンと置かれてて、しかし意味がわからな過ぎて使い道の予想も立てられない。
とは言え中盤では物語が動き出して、刺客の発したわずかな一言から隠された陰謀を暴いていく過程は、来た来た~ッ図書館の魔女!って感じで面目が躍った。言語ミステリ、いや文法ミステリとでも言おうか。錆びついた古典の授業の記憶を掘り起こしつつ、この作品を手に取る前、タイトルやあらすじなどから想像していた「読みたいもの」をまさに読めたという満足感に浸った。
そして終盤、事態の急転とともにキリヒトの秘密が明かされる。襲い来た新たなる刺客だが、こういう存在も登場するんだこの世界、とまず驚いた。その手のファンタジー要素もあるんだと。でもまあ確かにそういえば図書館の構造も物理法則を無視してるようなところがあったし、あとミツクビもなんか本当に首が三つあるみたいな描写があったっけ。なにぶんマツリカが知識と弁論で世をアレコレするところばかり見ていたので失念していた。
キリヒトの秘められた性能が明らかになったときの一団の中に走る緊張、しかしそれを見事に緩和してみせるイラムの溌溂さは大変よろしかった。いい一団なのだな、と思わせる。
あと、ハルカゼの忠臣ぶり。今巻は地味にハルカゼの奮闘がすごい。全体を通して前面には出ていないが、身体が弱いと言いつついちばん働いてるではないか。図書館と、その主の両方に魅了されて、己の出自すら裏切ってしまうその思い切りの良さ、まあほんといいキャラよね。すきにならざるをえない。
最後のマツリカとキリヒトの深夜の密会もドキドキしたが、少し意外だったのは、マツリカは図書館の魔女としての責務を望んで果たしてたわけじゃないんだということ。いや、今までそうすることが当然と思ってきた、思うことすらしてこなかったのが、キリヒトの境遇に自身を重ねることで、いまはじめてそういうことに思いを伸ばした、ということか。マツリカの流した涙は単に悲しみや憐れみの感情だけではなく、そういう今まで触れてこなかったところに急に触れてしまったが故のある種のショック症状のようなものでもあったように思う。
そうした心の変化が今後の世の情勢と図書館の状況の変化にどのような影響を及ぼしていくのか……どうなるか今後の展開がまるで予測がつかないが、期待して次巻に行きたい。

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