7/24 『バイオスフィア不動産』を読んだ
ジャケ買いそしてタイトル買いの初読み作家。表紙のキャラクターは女の子かと思ったら男だったしボディはサイボーグだったし生身の肉体は肉片程度がちょこっと頭部に収まってるだけだった。うん……そこまでいってたら一周して、いくつかの難所をショートカットしてアリだよ。
お話は、言っちゃうならば『キノの旅』に出てくる国の、一軒家版て感じ。いや家ということでならジャンルがSFの『変な家』と言うべきか……読んでないからわからないが。あらゆる物質を生成できるマシンと、あらゆる欲求を代替できるシステムにより地球上のほぼすべての人類が家から出なくなった世界というのには、個人的には果たしてそうなるものかと思わないでもない。別に僕自身は外交的でも外向的でもないが、しかし「家」ってそんな、自分の欲望で満たして、それで終えられるようなもんだろうか? という気がする。それはなんか「前提」で、そこを拠点あるいは基点として、さあ外に己の欲望を広げようってなるもんじゃないかしら。繁殖欲というか、外征欲というか。それに人間は果たして自らの欲求のみで自らを満たせるのか? という疑問もある。よくオープンワールド系のゲームで自由度抜群、世界を脅かす魔王を倒しに行ってもいいし町で家を建てたり農業に勤しんだり他プレイヤーと結婚したりしても良し、みたいなのがあるが、俺ああいうのにあんまり食指動かない……他人のコーディネートを吟味したい。建物を探訪する番組が長年愛されているように、自分のマイハウスを作り上げたら他者とそれを比べたい、あるいは他者が用意したクエストを踏破していきたいという欲求もあるのではないか。他者の物語に触れて思ってもいなかったことを思ってみたい、性癖を開発されてみたい、みたいな欲が。ゆえに人は物語を読むし、そもそも本作自体が、様々なお客様のクレームを辿って様々なお客様のお家を拝見するという欲望を刺激している。
そういった欲求もバイオスフィアⅢ型建築は代替できるものを用意して内部で完結できるとのことだが……はてさて。作中ではこうなる前の時代に大きな戦争があり、そこでは人体を機械に代替したサイボーグ同士の戦争でしっちゃかめっちゃかになったという背景があるから、人類全体がそうした「外」へ向いたエネルギーをあらかた使い果たしちゃって今は眠りの時期だという裏設定があるのかもしれない。裏っていうか、こっちが勝手に読み込んだ違法建築みたいな裏設定だが。
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